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2004年に観た映画の一覧です

今年の目標: アイドルを探せ'04

総括: 今年の映画はいまひとつ盛り上がりにかけた。アイドルも結局探し出すことは叶わず。やっぱり、みっちー、いづみさま、ふかっちゃんだな。

Best10です。(旧作は含んでいません。ただし日本初公開作は新作扱い)

  1. #44「2046」王家衛/2004/香港=中=仏=伊=日
  2. #57「ビヨンド・アワ・ケン」彭浩翔/2004/香港
  3. #39「珈琲時光」侯孝賢/2003/松竹
  4. #42「モーターサイクル・ダイアリーズ」ウォルター・サレス/2003/英=米
  5. #31「子猫をお願い」チョン・ジェウン/2001/韓国
  6. #35「地球で最後のふたり」ペンエーグ・ラッタナルアーン/2003/タイ=日=蘭=仏=シンガポール
  7. #40「父、帰る」アンドレイ・ズビャギンツェフ/2003/ロシア
  8. #6「気まぐれな唇」ホン・サンス/2002/韓国
  9. #72「オールド・ボーイ」パク・チャヌク/2003/韓国
  10. #23「キル・ビル Vol.2」クエンティン・タランティーノ/2004/米

星の見方(以前観たものには付いてません)
★★…生きててよかった。
★…なかなかやるじゃん。
無印…ま、こんなもんでしょう。
▽…お金を返してください。
凡例
#通し番号「邦題」監督/製作年/製作国/鑑賞日/会場[星]

#76「しあわせはどこに」西河克己/1956/日活/Dec. 23/ラピュタ阿佐ヶ谷
きょうは天皇誕生日。阿佐ヶ谷に来る前にいた渋谷駅前には“てんのおへえか、ぶあんざーい”を連呼する人がいた。その街宣車に付けられた垂れ幕には“大元陛下”。ここが全体主義国家に戻るにはだいぶ猶予がありそうで安心した。さて、いまラピュタはなつかしの歌声特集。そのひとつに、コロンビア・ローズが唄う同名曲がフィーチャーされたレアな本作を見つけ、躍り上がって喜んだ。いづみさま#19。主役だ。両親に先立たれ、養父に虐待され、宍戸錠には言い寄られ、とことん薄幸ないづみさまを救うのは、葉山良二と二本柳寛。二本柳がいついづみさまを襲うかと、多少はらはらしていたが、そこは西河映画。最後はきちんとハッピーエンドでまとめてくれます。必然性のない鳥取砂丘歩きに微笑。
#75「約三十の嘘」大谷健太郎/2004/『…』製作委員会/Dec. 18/シネクイント
ゴンゾウ。こいつが出ているというおかげで、パンダゴロに引きずられ観に行く羽目になった。ゴンゾウなんて頭部がその辺に転がっているだけで、全然出番なかったじゃん。だいたいあいつは、僕が2000年に考案した邪悪パンダ(『ちょいちょい食いたいなぁ、こんなの』でパンダゴロのアイコンに使用)のまねじゃないかな。クレイジーケンバンドによるBGMを筆頭に、'80年代あたりの2時間ドラマの風情にしているのは悪くないアイデアだが、残念ながらテレビドラマの域を超えていない。『シベ超』は超えているかもしれないが。何もかもが嘘に見えるので焦点が合わないんだな。でも、最大の問題点は、椎名桔平が呉孟達にしか見えないことだと思う。
公式サイト
#74「シチリア!」ジャン=マリー・ストローブ,ダニエル・ユイレ/1998/仏=伊/Dec. 18/アテネ・フランセ文化センター★
ストローブ=ユイレには興味津々であるものの、ほとんど手を出していない。そんな中で本作は例外のひとつ。1999年の東京国際映画祭で観たときは、気に入りながらもうとうとしてしまったことが悔やまれていた。DVDも出ないし。今回アテネ・フランセで特集上映が組まれたので再チャレンジしたのだが、残念ながらまた自爆。それでも、やはりこいつは傑作である。街を遠望するシーンのパン以外は、徹底してフィックスされたキャメラ。ひとりをアップで、ふたりをやや斜に全身で捉える、陰影の濃いモノクロ映像。そして、なんとも心地よいせりふ廻し。イタリア語がわかればもっと面白いはずだ。ああ。(一回転して手を打つ。) 映画は素晴らしい。DVD発売を切に願う。オレンジも、にしんの炭火焼も、ドライトマトとベーコンの煮込も美味しそうだが、かたつむりだけは勘弁だな。
#73「梁山伯と祝英台」李翰祥/1963/香港/Dec. 4/国際交流基金フォーラム
西本正=賀蘭山は香港で活躍したキャメラマンである。彼のインタビューをまとめた本(これが痛快に面白い)が出たのを記念したのか、特集上映が組まれたので、未見の本作を観に行った。いわゆる黄梅調と呼ばれるオペレッタで、題材は超有名な古典。徐克の『バタフライ・ラヴァース』はこれのリメイクだな。確かに豪華で、当時大ヒットしたというのもうなずける気はしたのだが、どうもくどい。梁山伯と梁山泊は関係ないのか、とかバカなことを考えながら、終わるのを待った。そうそう、キャメラマンのほか、出演者にも日本人がいたぞ。祝英台のお母さん。『秋刀魚の味』では国に帰るということだったが、香港出身だったのか、富沢さん。(なんてね。)
#72「オールド・ボーイ」パク・チャヌク/2003/韓国/Nov. 28/有楽町スバル座★
チラシに“この映画の結末は絶対に口外しないでください。秘密を漏らすと15年監禁される事があります。”と書いてある。そんなことするよりもコアコンセプトに関する観た人の記憶を、終映時に催眠術で消すのがいいんじゃないかな。秘密は漏れないし、同じ人が何度でも感動して観てくれるよ。ビデオが普通になっている現代、このような作品を製作するのはチャレンジングだよね。チェ・ミンシクとユ・ジテ、両者の執念深さはあきれるほど。エネルギーを復讐だけに集中して生きれば、それも可能か。日本の劇画が原作だという脚本がとにかく秀逸。その表現方法には賛否両論あるかもしれないけれど、少なくともタラちゃんにウケることはまちがいない。
公式サイト
#71「妖刀物語 花の吉原百人斬り」内田吐夢/1960/東映京都/Nov. 28/フィルムセンター(FILMeX)
それまで堅かった商売男が初めて行った遊廓の女にのめり込んでしまい人生を棒に振る、『浪花の恋の物語』によく似た設定。だが、こちらは天下の吉原が舞台である。主役は千恵蔵と水谷良重。千恵蔵の守り刀が“妖刀”で、それまで静かだった千恵蔵が最後の最後にキレる際、活躍する。水谷良重は、いづみさまの『青年の椅子』なんかにも出ているが、どこがいいのかさっぱりわからない。にも関わらずいつも結構いい役だ。芸能界の権力構造を垣間見る気がする。その水谷良重のいるお茶屋の主人は、三島雅夫と沢村貞子。この二人がやっている店とわかっていて上がる千恵蔵は無謀だね。太夫の衣装というのは重そうだ。背中がかゆくても掻けそうにないし、トイレでも拭けそうにない。僕だったら気が狂うな。
#70「浪花の恋の物語」内田吐夢/1959/東映京都/Nov. 28/フィルムセンター(FILMeX)
千恵蔵は近松門左衛門。錦ちゃんと有馬稲子の悲恋物語をネタに、彼が創作する姿を並置するシナリオはなかなか面白い。ただ、最後まで千恵蔵の存在は二人からは不可視なのかと思っていたら、途中で交流があり少々興ざめ。錦ちゃんを“ちゅうさま”と呼ぶ有馬稲子。“ヨンさま”を連想して吹き出しそうになる。錦ちゃんの奉公先の女主人・田中絹代は、相も変わらず、即興的な間合いを入れながら喋っていた。ありゃ、死ぬまで治らなかったのかね。それとも世間ではあれが評価されていたとか? 千恵蔵が左手小指の爪を伸ばしているのが気になった。近松門左衛門が当時そうしていたのか、千恵蔵が当時そうしていたのか。『秋日和』の原節子みたいな謎である。
#69「プロミスト・ランド」アモス・ギタイ/2004/イスラエル=仏/Nov. 27/有楽町朝日ホール(FILMeX)
エストニアからエジプト経由でイスラエルに送られてくる売春婦たちを追ったドキュメンタリー風の作品。役者はどこからどうやって調達したんだろう。暗い駐車場に集まるバイヤーの間で、野菜みたいに競り落とされて行く人間。彼女たちの反応は、泣いたり、開き直ったりさまざまだが、誰も生きる意味を失っているようだ。そんな状況下でユダヤ人とパレスチナ人の戦いに巻き込まれ、死んで行く。誰も気にしてない。騒ぎの中、逃げ出した二人はどこに行けるのだろう? 題名からしてかなりシニカルな作品で、イスラエル政府にはあまり嬉しくない内容だと思う。僕はギタイ監督の政治的立場は知らないけれど、一度パレスチナについてどう思うか聞いてみたいものだ。
#68「酒と女と槍」内田吐夢/1960/東映京都/Nov. 27/フィルムセンター(FILMeX)
武士道とは死ぬことと見つけたり。不可抗力とはいえ切腹できず、侍をやめるしかなかった大友柳太朗。酒と(特定の)女と槍が大好きだった彼には、酒と女が残った。そんなわけで一旦世捨て人となるけれど、徳大寺伸に誘われ、再び槍を取って関ヶ原へ死にに行く。侍をやめたくせに、しっかり槍を保管しておいたところが気に入らないね。手入れも続けていたらしく、すぐに合戦で使っていたぞ。“こざかしい奴。”(ちなみに、千恵蔵も出演してます。) 淡島千景が“(特定の)女”の師匠役で出演。彼女の大友柳太朗への恋慕がサイドストーリーなのだけれど、消化不良のまま終わってしまった。大友柳太朗の喋り方は、いつ聞いても総入れ歯のおじいさんみたいだ。この頃はまだ若いのに。
#67「懺悔<ざんげ>」ソン・イルゴン/2004/韓国/Nov. 25/有楽町朝日ホール(FILMeX)
パズル性の高いタイムパラドックスものの一種とみなしてもいいだろう。こういう作品は一度ではすべてがクリアにならないので、また観たくなる。かなり怖いサイコ・ホラーでもある。当然こういう性格の作品についてのネタバレはご法度であるので多くは語れない。ただ、本作品には、村上春樹ワールドに近いものを感じさせる魅力がある。別に原題が『蜘蛛の森』で『ノルウェーの森』を連想するからではない。まあ、観てもらえばわかります(一般公開予定は知らないけれど)。最近、日本やアメリカでもサイコ・ホラーが流行しているようだが、チェックしていないのでそれらとの比較ができないのは、残念といえば残念。もともと日米映画は観る気ないから、どうでもいいといえばどうでもいい。
#66「終わらない物語」ハッサン・イェクタパナー/2004/イラン=仏=シンガポール/Nov. 23/有楽町朝日ホール(FILMeX)
国境を越えると、別の言葉を喋る人たちが別の服を着て別の家に住んでいる。こちらは戦争なのにあちらは平和で、生活水準もえらく違ったりする。なのに勝手に行き来できない。となれば、違法な国境越えを手配する商売が出てくるわけだ。映画は、密出国の一行とそれを追うジャーナリストが国境にたどり着くまでを描く。が、Never Ending Storyというからには、まだまだ先があるはずだ。道なきハゲ山をみんな走る走る。よく倒れるものが出ないな。途中で警察に出会って撮影隊を装って難を逃れるエピソード。あれが通用するほど素朴な国なのかなあ…。イラン映画らしいといえば、いえる。ところでブローカーさん、“警察に会ったからきょうは国境は越えない”のにその晩パスポート偽造の準備をするのはおかしいのでは?
#65「森と湖のまつり」内田吐夢/1958/東映京都/Nov. 23/フィルムセンター(FILMeX)
健さんvs三國連太郎。大物対決である。こういう場合、痛み分けに終わるというのが定説。事実そうなる。アイヌ問題が映画界をも賑わせていた時代の一本。これを語るのはなかなかむずかしい。僕は、国境とか民族とか人種とかどうでもいいじゃんという立場なのだが、そう思っていない人もたくさんいる、というか大半がそうなわけで。アイヌの純血がどうの、差別がどうの。当事者には大変な問題だろうが、人間なんてみんなおんなじなんである。みんな仲良くやりましょう。ベカンベ祭が始まったのに、その花が咲いていなかったのはなぜだ? 途中から中原ひとみがまったく出てこなくなったのはなぜだ? 香川京子があんなに熱い演技をしているのはなぜなんだ?
#64「雲の南へ」朱文/2003/中国/Nov. 21/有楽町朝日ホール(FILMeX)
中国の藤村有弘・李雪健主演の『月曜日に乾杯!』。めざすはヴェニスならぬ、中国の桃源郷・雲南である。老徐が住む北部(どこ?)と雲南の、空の色がまったく違う。観光地や風俗などまったく見せないけど、それだけで雲南の魅力が伝わってくるような気がした。彼が雲南に行きたい理由はなかなか明かされない。このストーリー展開は、さすが作家出身。憎いね。それが観客に一気に示される幻想的シーンもすばらしい。結局最後まで体は自由にならないけれど、老徐は確かにもうひとつの人生を楽しんでいる。それにしても、売春婦に騙された上、不運にも警察に連れていかれるエピソード。怖いなあ。どこかでの按摩小姐事件をちょいと思い出した。プロデューサーの田壮壮が警察署長役で堂々出演。監督業もよろしくね。
#63「暴れん坊街道」内田吐夢/1957/東映京都/Nov. 21/フィルムセンター(FILMeX)
佐野周二が道中暴れて、ペンペン草も生えない状態にしていく話かと思ったら、どうやら暴れん坊というのは子役を指しているようである。そうだよな、佐野周二じゃ『とんかつ大将』がせいぜいだ。内田吐夢映画の子供って、どれも同じに見える。汚くて元気がよくて生意気で憎めないやつ。このお涙頂戴映画では、佐野周二と山田五十鈴の子で里子に出された末、馬子になった男の子。双六を懐にもっていて、なかなかいい調子で口上を述べながらさいころを振る。…調べたところ、『血槍富士』の男の子とは同一人物らしい。同じに見えるわけだ。ちょい役だが、馬喰の親分に進藤英太郎。こういう半分とぼけた悪人をやらせると、ほんと巧いね、この人は。
#62「黒田騒動」内田吐夢/1956/東映京都/Nov. 21/フィルムセンター(FILMeX)
千恵蔵vs南原宏治(伸二でクレジット)。大物対決である。南原演じる野心家の下級家臣の野望に、キリシタンの組織的陰謀が絡み、お家は大騒動。これを千恵蔵が、老練の策で一挙解決する。大友柳太朗は幕府の要人で正義の味方。千恵蔵を援助する姿は、さすが怪傑黒頭巾である。忍者も出てくるし、ご禁制船の炎上シーンもあり、なかなか楽しめる大型娯楽時代劇であった。強いて言えばお色気がないが、内田吐夢にそんなものを求めるのは間違っているから、気にしない。柱の板をくるっと90度回すと十字架になるキリシタン隠れ家。わはは。そんなのじかに見りゃすぐばれるぞ。千恵蔵の息子役で出ていたらしい片岡千恵太郎というのは実の息子かな? ひねりのない芸名だな。鶴太郎の方がましだ。 
#61「自分の穴の中で」内田吐夢/1955/日活/Nov. 20/フィルムセンター(FILMeX)
1955年、内田吐夢は違う会社で三本撮っているんだな。で、翌年からは東映に定着する。もともと左翼的だった人が、甘粕理事長の満映で敗戦を迎え、帰国後も満映の流れを汲む右翼的な東映でメガホンを取る。作品を観る限り、転向したようにもみえない。不思議な人である。本作は、三國連太郎、月丘夢路、北原三枝、宇野重吉、金子信雄というそれぞれ個性的に利己的な5人をめぐる絶望的な物語。あの善人俳優、宇野重吉でさえひどい奴とは、さすが巨匠。ニヒルな金子信雄も、めずらしく悪人じゃないなと思っていたら、やはり悪人なんである。ただ、周りも困ったやつらばかりだから目立たないだけ。終映後ははるばる目黒に移動し、久しぶりにとんきで夕食。串も一本付けたもんね。しあわせだ。
#60「たそがれ酒場」内田吐夢/1955/新東宝/Nov. 20/フィルムセンター(FILMeX)
開場前の行列が長い。そんなにみんな津島恵子のストリップが観たいのか? どこかの駅近くにある居酒屋を舞台にした、いわゆる(観たことないが…)『グランドホテル』形式の人間模様ドラマ。豪華な顔ぶれが次から次へと現れ、ささやかなエピソードを残し、お勘定して去っていく。タンバもいる。宇津井健なんぞにフォークで手を刺され逃げていく、なっさけないチンピラである。加東大介と東野英治郎の出会いと会話は『秋刀魚の味』における加東大介と笠智衆のそれ、そのものだ。ところで津島恵子だが、誰にでも予想できるように、彼女が脱ぐ前に事件が起きてお開き。終映後、近くのINAXギャラリーで、この日が最終日の『建築のフィギュア展』を見る。フォトモに脱帽。僕もやりたい。
#59「血槍富士」内田吐夢/1955/東映京都/Nov. 20/フィルムセンター(FILMeX)★
東京FILMeX、今年の日本映画トラックは『映画真剣勝負』と銘打った内田吐夢監督選集である。昨年の清水宏特集が小ホールだったのに対し、堂々の大ホールでの上映。僕としてはいささか不満ではあるが、大ホールは小津だったんだから仕方あるまい。その小津安二郎も協力した、内田吐夢、満映からの復帰第一作。全編の95%はいわゆる“旅は道連れ、世は情け”のほのぼの旅日記。これと残り5%の仇討ちシーンとの断絶がシャープで、ここに至って吐夢作品であることを頭に叩き込まれる。主演は片岡千恵蔵、脇に進藤英太郎。“野だての風流”で、渡辺篤の顔も見られる。終映後、市山さん司会で、高橋洋氏と篠崎誠氏のトークショウあり。大傑作『飢餓海峡』についてのおたっきーな熱い語りが楽しかった。
#58「フェーンチャン〜ぼくの恋人」コングリット・スリーウィモルほか6名/2003/タイ/Oct. 31/シアターコクーン(TIFF)
ターンレフト・ターンライト』と同じくらい甘甘&鏡像な映画。女の子組と男の子組の間で揺れ動く小学生の床屋の息子。男の子組への参加は、幼なじみの床屋の娘(これが誰かに似ているんだけど、思い出せない)との苦い別れを意味していた。子供の遊びが次から次へと出てくる。日本の遊びに似たものもあれば初めて見るものもあって、懐かしいやら興味深いやら。男の子組にも女の子組にも、構成員にデブとメガネがいる。これはグループを作るときの万国共通の決まりごとだな。それにしても、監督が6人というのは驚異である。オムニバスでもない、普通のドラマなのだ。どう分担したんだろう? それに、監督側の問題が解決しても、演じる側は堪らないよね。
#57「ビヨンド・アワ・ケン」彭浩翔/2004/香港/Oct. 30/VTC六本木ヒルズ6(TIFF)★
恥ずかしい話を3つ。一、恥ずかしながら彭浩翔という才能をこの映画を観るまで知りませんでした。二、恥ずかしながら香港で大人気というTWINSをよく知りませんでした。もちろん、鍾欣桐も。三、恥ずかしながらクレジットを見るまで、女の子が『ションヤンの酒家』の陶红だということに気がつきませんでした。あの人、何歳なんだろう? とにかく、本作が僕にとって今年の映画祭の最大の収穫であることは間違いありません。たった2週間で撮られたとは信じられない。今後も要注目の監督です。鍾欣桐と陶红は、広東語と北京語で会話します。これは『2046』での梁朝偉と章子怡と同じ。香港では、これがいまや普通なのでしょうか?
#56「ターンレフト・ターンライト」杜琪峰,韋家輝/2003/香港/Oct. 30/シネマミラノ
女は日本赤軍へ、男は愛国党へ、それぞれ別れた2人が宿命の対決へ向う、なんて話ではもちろんなくて、『君の名は』も真っ青の、徹底的すれ違い&鏡像ドラマ。金城武と梁詠琪が出会うのを、野川由美子と徳大寺伸が徹底的にじゃましようとする。たわいもない話だけれども、こんなのがロングランするんだよね。しあわせな気分に浸りたい方はどうぞ。さて、パンダゴロは以前から、ロンディーノのおねえさんは梁詠琪に似ていると主張していた。これに対して僕は、梁詠琪に似ているのは津島亜由子の方だと思ってきた。今回彼女を観ていてわかったのは、どうやらどちらの主張も同じくらい正しいようだということ。要は3人とも可愛いのである。梁詠琪の声が北京語に吹き替えられているのが興ざめでした。
#55「狂放」陳正道/2004/台湾/Oct. 29/ル・シネマ2(TIFF)
本映画祭3本目の同性愛話。またかよ。『胡蝶』のQ&Aで監督に意見した外国人のおじさんの気分になってきた。しかも、よくわかんないし。2人の女子高生と2人の男子高校生がいてこの4人は仲がいいのだけど、なぜか♀+♀、♂+♂とくっついているのである。でもって、♀がひとり自殺しちゃう。んで、残った♀が結婚することになって、♂2人がお呼ばれするのだが、そこで花嫁と一緒に逃げ出しちゃうんだな。おしまい。眠かったのでちょいと自信がないけど、こんなストーリーだったと思う。全然わかんないね。ベネチアの批評家週間で賞を獲ったらしいけど、いかにもインディペンデンスっぽい画面と併せ、僕には辛かった。
#54「見知らぬ女からの手紙」徐靜蕾/2004/中国/Oct. 29/ル・シネマ2(TIFF)
“見知らぬ”なんてとんでもない話だ、と誰でも思うだろう。いくら徐靜蕾が地味な顔をしているからといって、もしほんとに知らないんなら、姜文は相当の健忘症ということだ。監督・徐靜蕾の第2作。舞台は日中戦争開戦前夜から中華人民共和国成立前夜までの北平。撮影には“中国台湾”から李屏賓が招かれた。なんで“中国”なの? “台湾省”でいいのでは? あ、でも“省”ならわざわざ明記したりしないか。ともかく、もうひとつの中国政府の支配下にある島からやって来た職人撮影監督のおかげで、しっとり落ち着いた画面が得られている。姜文をひたすら慕いながらも、自分から行動を起こすことのない徐靜蕾。メメント姜文にしてみれば、どうしようもないことで、死んでから色々言われても困るよなあ。まあ、すぐに忘れちゃうからいいのかもしれないけど。
#53「独り、待っている」伍仕賢/2004/中国/Oct. 29/ル・シネマ2(TIFF)
□冰冰。空欄を埋めてください。“白”? はい、全うな回答です。“李”? ふーむ、誰だっけ、それ。そうか、『ただいま』で観た女優だな。なんだか相本久美子に似ている。主役の夏雨が一目惚れするのは彼女だが、彼女よりも共同経営者の妹の方がいいよ。部屋にPowerBookがあるのも好感がもてる。ヴァネッサ・パラディみたいなのがいまいちだけど。映画は、なかなか面白かった。ただ、北方系北京語はこういうポップなラブストーリーに馴染まない気がする。偏見だろうか。きょうはいつもの渋谷に戻ってきた。このミニシアターの座り慣れたシートに座って思ったのは、“シネコンの方がシートが広くていいな”ということ。少し六本木会場を見直した。駅にも近いしね。
#52「時の流れの中で」鄭文堂/2004/台湾/Oct. 29/VTC六本木ヒルズ7(TIFF)
故宮博物院提供という異色映画。上映後の廻りの声を聞くと好評のようだったが、僕にはピンと来なかった。財宝を大陸から奪ってきた国民党を正当化しているように見えるのは穿った考えか? 少なくとも、本作には外省人の視点しかないことが気になった。それと、ストーリーの薄っぺらさ。おじいさんの記憶が、あそこまで人を動かすものだろうか? 主演は『藍色夏恋』の桂綸鎂。彼女の演技は、前作とあまり変わりがないけれども、なかなかよかったと思う。いい女優さんになってもらいたいものだ。ゲストとして来たのだが、“一般の方は撮影禁止となっている”そうで、写真が撮れなかった。高いお金を払って観に来ている一般客を冷遇し、プレスをやたらと優遇する映画祭事務局の姿勢には、まったくあきれる。それはさておき、今回確信したのは、彼女はMONDO GIRLSの松村あやかに似ているということだ。これはいささか残念である。
#51「胡蝶」麥婉欣/2004/香港/Oct. 28/VTC六本木ヒルズ2(TIFF)
Q&Aで、限りない選択肢の中から同性愛をテーマとして選んだ監督に対し、二人もの質問者が異議を唱えた。正論だと思う。同性愛映画を撮ることがアメリカ文化への迎合かどうかは疑問だが、同性愛が人類の将来を約束しないのは明らかであり、これを助長する文明は自滅する。同性愛だろうが異性愛だろうが、映画として優れていればいいとか、そういうのもちょいとどうかとも思う。だが、このような、少数しか観る機会がないと思われる映画が同性愛を正当化しても、それが人類滅亡を速めるわけでもあるまいとも思う。Q&A司会の襟川クロは、帰り道、質問者の悪口を友人と喋っていた。そういうのは密室でやってね。英語の歌のシーンで、中国語字幕が出たので、それを見ていたら“Japan”が“日本皇国”となっていた。この記述は初めて見たのだが、普通なんだろうか?
#50「夢遊ハワイ」徐輔軍/2004/台湾/Oct. 28/VTC六本木ヒルズ2(TIFF)
台湾映画は素晴らしい、と僕が思う理由のひとつは、社会的弱者に対しとても優しい眼差しをもっていること。本作では、主人公といえる4人のうち、2人が心を病んでいる。ひとりは徴兵で恋人から引き離された淋しさから、もうひとりは将来に対する両親からの期待の重さに堪えかねて。そんな2人に対し、元気そのもので除隊間近の海兵隊青年2人は、やはり優しく接するのである。Q&Aで監督は、とにかく夢のある作品を撮り続けたいと抱負を語っていた。陳玉勲ほか、そんな人が何人かいてもいいよね。他のゲストに主人公4人が勢ぞろい。ちゃんと化粧した女優さん(名前知らない)はきれいでした。ところで、バカっぽい檳榔売りの娘(前出の女優とは別人)のコスチュームは、きわめて斬新。あんなの本当にいるのだろうか? いるのなら、中正機場からの道沿いに出店していただきたい。
#49「美しい洗濯機」ジェームズ・リー/2004/マレーシア/Oct. 26/VTC六本木ヒルズ6(TIFF)
パンフレットの解説:“気まぐれな中古の洗濯機に手を焼く男の前に、物言わぬ少女が現れて謎が解ける。” 頭が悪いのか、僕には解けませんでした。Electroluxの緑色の洗濯機は、前半の男の家にも後半の男の家にもあったけれども、これが同一のものとは思えないし、どうなっているんだろう? ともあれ、冷たく不条理なKL、というイメージだけは伝わってきた。後半の男の娘婿は、MayBank前で殺される前半の男と北京語で喋っていたのに、妻や義父とは広東語で話をしていたようだ。当然、マレー語も喋れるんだろうな。うらやましい。こういう多言語映画がたくさんラインナップされているのは、スポンサーのNOVAの圧力だったりして。3日通ったら、だいぶ六本木ヒルズの様子がつかめてきた。もうガイドマップはプーヤオだ。
#48「ライス・ラプソディー」ケニス・ビー/2004/香港=シンガポール/Oct. 26/VTC六本木ヒルズ7(TIFF)
原題は『海南鶏飯』。肉骨茶とあわせ、シンガポールで美味いものの双璧である。…Tiger Beerと一緒に食したい…、ずずず(涎)。舞台はチャイナタウン。海南鶏飯(トラディショナル&ノーマル)屋を営む、張艾嘉演じる母親が、おしまいには海南鴨飯(コンテンポラリー&ゲイ)を受け入れる。海南鴨飯を発明するのはMartin Yan(彼がゲイなのではなく、それは張艾嘉の三人息子)。料理エンタテイメントTV番組『Yan can cook』のYanさんだ。見ないうちにだいぶ老けたようだが、相変わらずのダブル中華包丁みじん切り技は楽しい。Q&Aでも話題になったけど、シンガポール映画は言語のるつぼ。交換留学生という設定でフランス語まで乱れ飛ぶ。ただ、シングリッシュがあまり強調されていなかったのは、監督が意図的にそうしたらしい。この点はいささか残念。
#47「青春愛人事件」顥然/2004/中国/Oct. 26/VTC六本木ヒルズ6(TIFF)
映画、小説を問わず、永遠の紋切り、○オチ物。劉燁が、スーパーモデル・石周靚演じる女子高生に出会い、さまざまな事件に出くわしながら、彼女に惹かれていく。だいたい○オチというやつは、ずるいし、おかしい。本作についていえば、話のつじつまが合っていて、リアリティがありすぎる。老莫のカツラも…、この人、どっかで観たことがあると思うけど、誰だっけな。この映画を台湾で撮るとしたら、張震と李心潔の『愛你愛我』コンビがいいと思う。雰囲気が似ているよ。Q&Aセッションがあるというので、石周靚が出てくるのかと期待していたら、太った原田真二みたいな監督だけでがっかり。本作を公開もしていないのに、2を企画中であることを披露。そんなのあり?
#46「若い人」張徹/1972/香港/Oct. 25/VTC六本木ヒルズ2(TIFF)
カンフー映画の巨匠が作った青春物。最近逝去した仁侠映画の名職人・小沢茂弘が『アマゾン無宿』とか『ヒマラヤ無宿』を器用に撮ったようなものかと思ったが、観てみれば、カンフー映画そのものの武骨なつくりで撮られていて笑ってしまった。バスケットボールだのゴーカートだのの勝負シーンが延々と続く。本作は、陳美齡(アグネス・チャン)のデビュー作。1972年といえば彼女が『ひなげしの花』で日本デビューした年でもある。映画では『サークル・ゲーム』などおなじみの英語曲を地声で披露。せりふは北京語吹き替えだったけど、口の動きが結構合っているので変だなと思ったら、本人が北京語を練習して撮影でも一応喋っていたのだとか。これは上映後に行われたQ&Aでの本人の弁。なるほどね。何を隠そう、僕は元ファンだが、生でお目にかかったのは初めて。もう50歳になろうかというおばさんなのに、まだまだ可愛いですね。
#45「恋愛中のパオペイ」李少紅/2004/中国/Oct. 24/VTC六本木ヒルズ6(TIFF)
今年の東京国際映画祭、最初の鑑賞。六本木会場は、きわめて不便だ。今年限りでやめてほしい。それに、シネコンは嫌いだ。せめて、映画祭期間中はポップコーンを禁止してよ。なんにせよ、初めて六本木ヒルズに来た。こんなことでもなければ、興味が湧く場所ではない。さて、映画は周迅主演。彼女の不思議系キャラクターを強調した、ファンタジックでありながら悲しい物語である。改革開放が始まった後の北京の、急激な都市開発に反対する姿勢が感じられるが、政策を直接批判しているわけではないし、この程度なら現在の中国では普通で、検閲は楽々通過するのだろう。やや驚いたことには『べにおしろい<紅粉>』の監督なんだな。第五世代も変わらないと生きていけないということか。日本でロケしたという田壮壮の次作はどんなだろう?
#44「2046」王家衛/2004/香港=中=仏=伊=日/Oct. 24/日劇PLEX2★★
カンヌ映画祭無冠。ではあるが、キムタク出演ということで、こんな大きな劇場。初回とはいえガラガラなのはある意味当然だ。しかし、このスーパースター総出演ぶりは異常だ。梁朝偉、王菲、章子怡、鞏俐、張震、薫潔、劉嘉玲、特別出演で張曼玉まで。お買い得である。劉嘉玲がおばさんになっているのにはびっくりしたけれど、もう40だもんな。『花様年華』は『欲望の翼』の続編だということだったが、60年代三部作を完結させる本作は、二作とのつながりをはっきりさせ、心憎いばかりの完成度。音楽が完璧なグルーになっている。加えて、近未来小説の形で部分的に出てくる王家衛初のSF。この、コンサバとアグレッシブの見事な融合に、ため息が出そうであった。実際には、お昼前でお腹が鳴ったのであるが。
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#43「誰も知らない」是枝裕和/2004/シネカノン/Oct. 16/シネ・アミューズEAST
カンヌ映画祭最優秀男優賞。興行的にはとても成功しそうにはないこんな作品に、これだけで人が集まる。おそるべし、カンヌ。はっきり言わせてもらえば、なんとか君、そんなにいいとは思わなかったけどな。『華氏911』がパルム・ドールだし、タラちゃんの審査だし、なんとなく納得したりして。ラッキーだったね。ゆきちゃんが可愛かったな。死んじゃったけど。あと韓英恵という人。彼女もいい。『ピストルオペラ』に出ていたのか。ちょいと思い出せないな。主人公たちを地獄に落とす、子供以下の母親を演じるのはYOU。懐かしいじゃないか。いまはなきFOODIUMにFairchildのライブ見に行ったよ。ある意味、適役だが、リアリティがない。実話を元にしているというが、実際の母親はこんな可愛い人じゃなくて、鬼婆みたいなんじゃないの? (そんなのに何人も男が寄ってくるわけないか。)
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#42「モーターサイクル・ダイアリーズ」ウォルター・サレス/2003/英=米/Oct. 16/恵比寿ガーデンシネマ1★
先週、劇場まで行ったら最終回を残してすべて満席だった。あきらめて帰った。そんなに人気があるのか、チェ。それほど革命家の英雄が好きなら、日本の政治もなんとかなりそうなものだが…。やはり、単にTシャツの柄に過ぎないのか? そんなことはともかく、きょうは朝一番で行き、席を確保。20代前半で南アメリカを10,000km以上冒険旅行したチェ・ゲバラの足跡を2時間ぽっちで追えるのか、なかば疑っていたが、結構いけてました。パタゴニア(まで下ってない?)を疾走しろ、ポデローサ号。途中から革命家っぽくなっていくところは多少の誇張があるのかもしれないけれど、悩める若き日のチェ・ゲバラは、やはりシャイでフレンドリー。最後の最後に出てくる人物には素直に感動する。ブエノスアイレスのセットに感心。アルゼンチンのチネチッタみたいなところがあるんだろうか?
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#41「LOVERS」張藝謀/2004/中=米/Sep. 18/丸の内ルーブル
帰りのエレベーターの中、“あの女優”とかいう声が聞こえる。章子怡を知らないで観にきている人がいるとは、なるほど、メジャーになったもんだ、張藝謀。僕は彼女のファンというわけではないが、あの舞踏のセクシーさや、戦闘時の顔(これがむちゃくちゃ凛々しい)と普段の顔(これがむちゃくちゃかわいい)の対比を見るにつけ、大物と認めないわけにはいかない。彼女をめぐって、同僚のはずの金城武と劉徳華がせめぎ合う。ストーリーは水野晴郎も真っ青の、どんでん返しの連打。要は、そんなものどうでもいいのだ。監督が見せたいのは、ワダエミの衣装だ。程小東のアクションだ。そして、それらを主題とするカラフルな絵だ。秋から冬へ、紅から白へ、一瞬にして変わる高原。あんたは鈴木清順か?
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#40「父、帰る」アンドレイ・ズビャギンツェフ/2003/ロシア/Sep. 18/シャンテ・シネ1
2003年のヴェネチアで金獅子賞。デビュー作だという。予告篇を観ながら『動くな、死ね、甦れ!』のときのような期待を抱いていた。12年ぶりに突然帰ってきた父親。嬉しさを全面に出し甘えようとする兄と、嬉しさを奥に秘め反抗する弟。父子のドライブ旅行のハードな日々。最後の最後に見せる父親のストレートな愛情。クールだ。ちょいとタルちゃんを連想させる映像だし。ジェラール・ドパルデューの息子みたいな弟の高所恐怖症がうまく利用されたシナリオも憎い。ロシアのどの辺りの話なんだろう? 毎日雨は降るし、寒そうだ。で、最大の謎。あの箱は何だ? 『キッスで殺せ』みたいに…。まさかね。にちぇぼー、にちぇぼー。
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#39「珈琲時光」侯孝賢/2003/松竹/Sep. 11/テアトルタイムズスクエア★
冒頭に、小津作品からのサンプリングと思われる、富士山に“松竹映画”のスタンダード画面。(その後はヴィスタ。そういや『踊る大捜査線2』もそんなだったかな。) 外国人監督による松竹作品というものはこれまで存在したのだろうか? 侯孝賢による小津生誕百年紀念作品。同監督による“東京物語”という触れ込みだ。2003年12月12日に有楽町でワールドプレミア上映が行われている。僕はその年2度目の台湾旅行の直前でバタバタしていたこともあり、行かなかった。待ち望んだ鑑賞である。電車のシーンが多い。これは侯孝賢のトレードマークでもあり、厚田雄春の趣味でもあった。上信線なんて、『川の流れに草は青々』の内灣線や『恋恋風塵』の平渓線では失われそうな風情が残っており、観る者も(きっと)撮る者も嬉しくなる。東京では、電車の行く喧騒と、古書店あるいは喫茶店内の静寂の対比がいい。小津作品の中の喫茶店は結構賑やかだったと気づく。一青窈=原節子=娘、小林稔侍=笠智衆=父。娘のところへ父と母が訪ねてきて、父に供するため隣にお酒を母子が借りに行くシーンが最も微笑ましく見られるところだ。
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#38「新道 [前後篇]」五所平之助/1936/松竹大船/Sep. 4/フィルムセンター
川崎弘子に言い寄る外交官役は、やはり近衛敏明でしょう。配役間違ってますよ、五所さん。(パンダゴロは徳大寺伸がいいらしい。) 松竹三羽烏共演。女性陣は田中絹代と川崎弘子。3対2なのは訳あり。前篇で光っている佐野周二のポジションは、後篇に入ると弟・上原謙に交代。“新道”というタイトルは、上原謙と田中絹代の、現代でも十二分に新しい生き方を指している。佐分利信は冴えず。3人の人気もこんなバランスだったのかもしれないな。佐野・上原の家は、品川から電車に乗って帰るお屋敷だったので、てっきり鎌倉とか大磯かと思っていたら、大森だった。昔は海が見えたのか…。少し大きくなった、肝心のデコちゃんは田中絹代の妹役。やはり出番は少ない。また、笠智衆がクレジットされていたが、残念ながらどこにいたのかわからず仕舞い。どこまで続く大部屋時代ぞ、である。
#37「七つの海 [前後篇]」清水宏/1931-32/松竹蒲田/Sep. 4/フィルムセンター
フィルムセンターで高峰秀子特集が始まった。デコちゃんの芸歴は長く、出演作は160本(以上)。そのうち半数を上映。結構レア物が出るので期待大である。本作はバリバリの子役時代。最初期には男の子の役があったようだが、ここではちゃんと女の子。残念ながら、というか当然ながら、主役ではなく出番は僅か。その主役は姉の川崎弘子。江川宇禮雄が恋人なのだが、江川の兄・岡譲二に襲われ(前篇)、復讐のため岡と結婚し氷の女と化す(後篇)。前篇は“處女篇”、後篇には“貞操篇”と洒落た副題がついている。これは清水作品か? 心配無用。ときどき見られる移動撮影がその印である。冒頭は列車の展望車に佇む洋装の女。シルエットで即座に伊達里子とわかりはしたものの、足首が細く見えたのは特殊効果だろうか? それにしてもお昼どきのサイレントはきついね。
#36「恋や恋なすな恋」内田吐夢/1962/東映京都/Aug. 28/ラピュタ阿佐ヶ谷
主演・大川橋蔵。相手役・瑳峨三智子。なんの興味も湧かない組み合わせである。どんな映画? 文楽のことはわからないし、動画(アニメを指す)が使われているらしい。それでも、“腐っても吐夢”ということで出かけた。芝居の舞台装置をそのまま取り入れるとか、パンフに書かれた以外にも、色々野心的な演出がされていた。橋蔵が正気に戻って、さあこれから復讐か、小沢榮太郎もいよいよ最期か、と思ったら、漬物石のアップで突然“終”マーク。話まで意味不明。とても疲れた。話は10世紀の平安時代。富士山の噴火の話が出る。いつからあれは日本のシンボルと言われるようになったのだろう? やはり東海道が栄えた江戸時代かな? それまでは地元民にとってのただ不気味な活火山だったに違いない。噴火してバランスよく高くなったばかりに、国中から注目されて皆に登られ、ゴミの山になるなんて、可哀想なやつである。
#35「地球で最後のふたり」ペンエーグ・ラッタナルアーン/2003/タイ=日=蘭=仏=シンガポール/Aug. 21/シネ・アミューズEAST
これを観るか『丹下左膳…』を観るかで、パンダゴロとこないだ揉めた。見方によってはアサノvs.トヨエツといえそうなところだが、その実、単に順番を決めただけである。映画としては、こちらの方が数段できがよく面白かった。苦笑する場面(三池崇史、あんたもだ)も多少あったが、他国の文化を描くのは難しいものだから目をつぶろう。浅野忠信が演じるキャラクターは大変ユニーク。バンコクにある日本交流センター図書館(?)に勤める(異常に)几帳面な司書、と一言じゃ片づかない。ノイ(相手の女性)を思いきり対極に置き、ふたりの接近を不思議な映像で描く。撮影は杜可風。久しぶりだ。ふたりが海岸にいるとき、水際にローストチキンみたいなシルエットの大きな黒いものが見えていた。あれは何だ? アサノが去り際にそれに気づいて、“いぬ?”と言っていたような気がするけど。気になる。わざわざ撮影用に置いたもの?
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#34「丹下左膳 百万両の壺」津田豊滋/2004/『…』製作委員会/Aug. 7/恵比寿ガーデンシネマ1
天才・山中貞雄の『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』のリメイク作品。傑作といわれるオリジナルを超えようなどという大それた考えは、常識ある人ならしない。本作のように、観客に別の方向を示しながら全体としてはオマージュに見えるようし、真っ向勝負は避けるのが常套であろう。オリジナルはギャグのマシンガンで構成される喜劇だったのに対して、本作は人情を全面に押し出す展開。切り返しギャグのキレは全くなく、過剰なほどの色彩にやや面食らった。おそらく山中ファンとトヨエツファンしか観に来ないと思われるが、その割合はどうも後者が多そうに見えた。トヨエツの左膳は悪くない。でも、大河内傳次郎のオロオロ演技には負けるよ。江戸木純による、オリジナルをかなり残しながらも改作された脚本は、特に後半破綻しているように感じた。渡辺裕之が何のために出ていたのか理解できないし、壺の行く末にも納得いかないぞ。
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#33「偽れる盛装」吉村公三郎/1951/大映京都/Aug. 7/ラピュタ阿佐ヶ谷
『まいっちんぐマチ子先生』はこの人から取ったネーミングだろうか? 三原葉子と並び、日本映画界が誇る肉体派、京マチ子。演じる役は、少なくとも僕が観ている範囲ではいつも、ほぼ同じ性格と体格だ。三原葉子のように親近感がないのはどうしてだかわからない。何か僕を寄せ付けない空気がある。本作でも、次々とパトロンを替え、捨てた男をボロボロにしてしまう芸妓・君蝶を演じる京マチ子。空恐ろしい。そのパトロンを演じるのは殿山泰司、菅井一郎、進藤英太郎という面々。それぞれいい味出しているが、特に第三の男、進藤英太郎に注目だ。中野武蔵野ホールの企画で明らかになったように、言い寄る京マチ子にデレデレするコミカルな演技は、その容貌に対する意外性で飛び抜けている。進藤兼人と組んだ脚本はやや硬いものの面白かった一方で、大胆に動くキャメラには少々辟易した。
#32「藍宇 情熱の嵐」關錦鵬/2001/香港/Jul. 31/新宿武蔵野館2
最近、パンダゴロの買ってきた映画とホモソーシャリティーの関係について論じた本を読んだ。“ホモソーシャル”という言葉の意味、ホモセクシュアルとの違いがよくわかって勉強になった。“ミソジニー”だの“ホモフォビア”だの、社会学の権威になった気分である。(そういや、森永ホモ牛乳ってのが小学校の給食に出ていたなあ。社会学とはなんの関係もないが。) で、本作は、これまたパンダゴロに引きずられて観に行ったホモセクシュアル映画。監督が關錦鵬だから、単なる薔薇族(死語?)映画ではもちろんない。ドラマティックな場面やエグいシーンを抑えた演出は、やはり芸術的で好感が持てる。BGMも一切ない。舞台は北京。時代は1980年代半ばから10年くらいかな? 天安門事件が出てくる。時代の移り変わりが携帯電話の大きさの変化でわかる、というのは、いま現代を生きている観客の特権であろう。BGMはないと書いたが、エンディングには主題歌が大音量でかかった。アート系作品といっても、やはり香港映画である。
#31「子猫をお願い」チョン・ジェウン/2001/韓国/Jul. 24/ユーロスペース2★
ほえる犬は噛まない』のヒット(?)で気を良くしたユーロスペースが、またペ・ドゥナの映画をかけている。…くらいの気持ちで観に行ったのだが、いいじゃん、これ。タイトルバックが凝っている。主人公たちが打つ携帯メールの文字を風景に溶け込ませるモンタージュのやり方もなかなか新鮮。『(ハル)』のベタさと比較すると、新型メディアに対する映像処理の進化がよくわかる。主要な舞台は仁川。この街が発する閉塞感が、そこでもがき脱出しようとする女の子たちと同じくらい輝く。(女の子の中ではジヨンがいいぞ。)なんとなく『きらめきの季節/美麗時光』を連想した。いままで行きたいとぼんやり思いながら、なかなか実現されない韓国旅行の引き金となる予感のするフィルムだ。ところで、ペ・ドゥナの実家は“麦飯石サウナ”。麦飯石といえば、こないだの台湾旅行で見かけた基隆山の水を汲んだという“麦飯石”なるミネラルウォーターが思い出されるのだが、なんか関係あるのかな?
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#30「紅の拳銃」牛原陽一/1961/日活/Jul. 18/ポレポレ東中野
赤木圭一郎主演。スクリーンで観るのは初めてか? ハッと両手を拡げる、ヤンキーみたいな動作が恥ずかしい。ヘタな主題歌を2度も聞かされた。それはともかく、殺し屋・赤木圭一郎の誕生と、神戸の組織への殴り込み。紋切りだが、予期していなかったオチ。映画自体は結構面白かった。笹森礼子を除けば、周りはみな敵のようなものだが、見どころはやはり藤村有弘か。赤い裏地のダッフルコートを着る香港人の殺し屋。香港人にダッフルコートが必要なのかなあ? 日本に住む神戸のボス、三国人の小沢昭一と草薙幸二郎の兄弟が北京語を話すのに、香港からやってきた大ボス、小沢英太郎が流暢な日本語だけを話すのはおかしいのではないか?、とは誰でも思う疑問だろう。その小沢英太郎の女で赤木圭一郎の元恋人、吉行和子がどうやってOLを辞め香港へわたったのか、彼女は結局どうなったのか、などなど、謎はつきない作品である。
#29「若い川の流れ」田坂具隆/1959/日活/Jul. 18/ポレポレ東中野
いづみさま#42。洋次郎ものだからか、裕次郎ものだからか、さきほどと比較すると結構観客がいる。チラシによれば『陽のあたる坂道』の二匹目のドジョウ狙いで、外した作品とのこと。確かにあまり面白くない。なんというか、裕次郎がアホなのだが、アホなのかどうなのかよくわからない描写の仕方が気に入らない。肝心のいづみさまは、裕次郎の勤める会社の専務・千田是也の一人娘。十八番ともいえるハキハキしたお嬢様役である。変なヘアスタイルで、テニスウェア姿が見られる。初登場のシーンでは、ぐるぐる回る変なキャメラワークに閉口。そういえば、銀座辺りをブランコのように撮るタイトルバックにも気分が悪くなった。主役の二人、裕次郎と北原三枝が空中散歩するのは、パークビル、つまり日活本社ビル屋上。一度上がってみたかったなあ。あそこ、今度何ができるのかな?
#28「續 警察日記」久松静児/1955/日活/Jul. 18/ポレポレ東中野
いづみさま#10。フィルムがワカメ状態なのがひと目でわかるピンボケで、上下の揺れ具合からパーフォレーションもやばそうな冷や冷やものの上映。実際、何回も上映はストップ。映写技師さん泣かせのプリントだった。そういう状況であったことも手伝って、ストーリーがよくわからない。おそらく、そんなものはないのだろう。東北地方のある町の警察署の、台風前のあわただしい一日が描かれる。『踊る大捜査線』の湾岸署みたいなもんである。田舎で、こんな忙しいわきゃないだろう。その警察署に勤めるいづみさまは、恩田すみれ役、ではなく庶務のももちゃん。スモックご着用である。署長・三島雅夫の保身的な行動に、堂々と意見するヒューマニストだ。東北弁も喋るぞ。それにしても、超豪華出演陣。そんなに人気のあったシリーズなんだろうか? 映画としてはたいしたことないけれども。
#27「風船」川島雄三/1956/日活/Jun. 12/シネマアートン下北沢
いづみさま#12。彼女は川島映画に3度出演している。『洲崎パラダイス 赤信号』と『幕末太陽伝』(これはビデオのみ)は鑑賞済だが、本作は未見。観たい。そんなわけでパンダゴロをそそのかし、シモキタの、知らない劇場に出かけてみた。館内は川島ファンの若者でほぼ埋まっている。いづみさまは本作でもタマちゃん。といっても下町のそば屋の娘ではなく、カメラメーカー社長・森雅之(村上春樹という名前)の娘という、ブルジョアのお嬢様である。原作は大佛次郎。どら息子の三橋達也とその愛人・新珠三千代の『洲崎…』コンビに、二本柳寛と北原三枝が絡む愛憎劇がひとつの軸。この4人が棲む、“淀んだ”銀座と、森雅之、芦川いづみ、左幸子の“純粋な”京都の対極性がもうひとつの軸である。いづみさまは1960年を中心とする約10年間の“日本の純真”そのものといってよかろう。音楽は黛敏郎。『小早川家の秋』を思わせる旋律が新珠三千代や京都の街と共鳴していた。
#26「十三人の刺客」工藤栄一/1963/東映京都/Jun. 12/ラピュタ阿佐ヶ谷
七人の侍』を連想せずにはおれない題名。勝るとも劣らない迫真。53対13は、武蔵の一乗寺の決斗に次ぐ、無謀な戦いである。もちろん、少数の正義が勝つのだ。戦うは、片岡千恵蔵率いる暗殺軍団と、明石藩側用人・内田良平が率いる藩士集団。こんな奴は死んだほうがいいと内田良平だってきっと思っている雇い主・明石藩主を守るため、尊敬する千恵蔵と小さな宿場町で激突する。悲しい武士道である。暗殺を指示するだけで自分は手を汚さないハングマンの親玉みたいなのは、丹波哲郎演じる老中。またか。たまには悪役やれよ。月形龍之介が相変わらず渋かったな。ラピュタには、いつのまにか男性フロアスタッフが入っていて、前説をやっていた。男女雇用機会均等法の影響か? でもね、女性の方がいいよ。オオシマさんカムバック、なんてわがままは言わないけど。
#25「男の花道」マキノ正博/1941/東宝/Jun. 5/ラピュタ阿佐ヶ谷
戦時に撮影された芸道ものの一種。といっても、マキノが成瀬のようにストイックなものを撮るわけがない。長谷川一夫に古川緑波をぶつけて、賑やかな娯楽作品に仕上げている。三世・中村歌右衛門というのが長谷川一夫の役柄。江戸時代の歌舞伎界でトップスターだった役者だそうだ。(ちなみに、2001年に六世が亡くなって、2004年現在、歌右衛門は空席のようだ。) 失明した歌右衛門の眼を治すのが、ロッパ演じる土生玄磧なる眼医者。きょうのは近衛敏明には見えなかった。旅籠で手術をやるのだが、あんなので傷も残らず治ったら奇蹟であろう。それはともかく、一生の恩を返すため、なりふり構わず(というにはエライ長いこと言い訳して、ロッパが腹を切りそうになるが)舞台を捨てる男の花道。軍部にも、血気沸き立つ臣民にもきつとウケたでありましょう。
#24「今年の恋」木下恵介/1962/松竹大船/Jun. 5/ラピュタ阿佐ヶ谷★
岡田茉莉子特集の一篇で、吉田輝雄の松竹初主演作。木下恵介によるスクリューボール・コメディである。これは楽しい。二人のヴェロニカならぬ千栄子、つまり東山に浪花の両大女優がそれぞれ吉田の婆やと岡田の母親を演じて脇を固めている。特に東山の快演は、『沙羅の花の峠』の怪演に並んで注目に値するぞ。まだちんちくりんの田村正和が吉田の弟役で出演しているのも見ものだ。(とはいえ、オトナになってもあまり変わらないが。) ロビーに貼ってあった、当時のプレスシートによれば、吉田輝雄の身長は177cm。現代からすれば大したことないが、あの頃は相当の長身だったのだろうな。だからといって、鴨居に頭をぶつけるギャグはいかがかと思うけど。終映後、観に来ていたらしい岡田茉莉子の挨拶があった。“きっと羽根布団よ。”とは言ってくれなかった。
#23「キル・ビル Vol.2」クエンティン・タランティーノ/2004/米/May 8/丸の内ピカデリー1
やっと公開になった『キル・ビル』後篇。前篇のインパクトが強かった分、こちらはかなりおとなしい印象。とはいえ、相変わらずのタランティーノ節である。懐かしの『レザボア・ドッグス』Mr. Brown(マイケル・マドセン)が登場。あのときはやたらかっこよかったのに、本作でのていたらくは何だ? ユマ・サーマンとの対決があるのかと思いきや、ダリル・ハンナの毒蛇に殺られるなんて。ダリル・ハンナといえば、『ブレードランナー』のレプリカント・プリス。息の長い女優さんである。かっこよくなった気がする。えぐられた目玉は中国人のじいさんに作り直してもらえばよかろう。そしてビル役のデヴィッド・キャラダイン。といえば…、あれ、僕が知っているのはキース・キャラダインか。兄弟かな? メキシコのシーンがよかったね。さすが、ラテンの血が流れているだけのことはある。
#22「ならず者」石井輝男/1964/東映東京/Apr. 24/中野武蔵野ホール
パンダゴロによれば“マカオ映画の決定版”なんだそうだ。中国語題があって、それは『喋血雙雄』。呉宇森の『狼/男たちの挽歌・最終章』(あるいは『The Killer』)の原題である。ふーん。そういう眼で観てみると、どうやら高倉健=周潤發、杉浦直樹=李修賢、南田洋子=葉[艸/倩]文という対応付けができるようだ。丹波哲郎も三原葉子も脇役なのか。プリントがボロボロで、重要なシーン・カットが結構飛んでいたのが残念。でも、もし完全なプリントであったとしても、なぜ存在するのか理解できないシーンがこの映画にはある。それは、江原真二郎演じるギャンブラーと健さんがポーカーで勝負するところ。唐突である。“またお会いしましょう。ラスベガスあたりで。” お笑いである。
#21「三代目襲名」小沢茂弘/1974/東映京都/Apr. 24/中野武蔵野ホール
中野武蔵野ホールとは個人的にはきょうでお別れ♪である。記録によれば、最初に出かけたのは1988年。村上春樹原作(デビュー作)、大森一樹監督の『風の歌を聴け』であったようだ。ずいぶんと傾向が変わったなあ。とにかく、長いこと、どうもありがとう。さて、三代目とは山口組三代目・故田岡一雄組長のこと。高倉健が演じており、ずっと前に観た『山口組三代目』と重なる。(そういえば最近、山口組関連のニュースを聞かないな。いまの組長はなんて名だっけ?)おそらくは同じ自伝をネタ本としている関係で、話は敗戦直後の混乱期における第三国人連盟との対決がやはりメイン。本当にそうだったのか、あるいは東映のカルチャーか、韓国・朝鮮人差別バリバリで、反省のない日本人像がここにもある。
#20「キューバの恋人」黒木和雄/1969/日本=キューバ/Apr. 20/フィルムセンター
キューバ革命10周年を記念して作られた合作映画。理由に納得がいまひとついかないが、作られたことは映画史上の事実である。滑り出しは『勝手にしやがれ』。津川雅彦がハバナでキューバ人の女の子にまとわりつく、ジャン=ポール・ベルモンドなんである。いや、『長屋紳士録』における、飯田蝶子を頼る青木放屁といってもいいかもしれない。とにかく粘り強い。相手の女の子は、驚くべきくびれたウェストをもち、チェ・ゲバラを崇拝する革命兵士。映画はそのうちキューバ内を移動するロードムーヴィーと化す。と書くと、なんだか面白そうだが、実際にはそうでもないのが残念であった。上映前に挨拶した監督のすぐそばで鑑賞することになったのだが、そんなわけで少々うとうとしてしまったかも。失礼、監督。でもフィルムセンターは飲食禁止ですよ。
#19「北海の暴れ竜」深作欣二/1966/東映東京/Apr. 10/中野武蔵野ホール
極悪・安部徹の客人、舎弟・コロを連れた高城丈二って誰だ? 主役・梅宮パパのライバル、つまりアキラに対するジョーのような、スタアのやる役柄である。それに『千羽鶴』で若尾ちゃんの娘役を演じ、作品を暗くしていた梓英子が梅宮の相手役。この二人を筆頭として、どうもしょぼい面子の作品。藤田進なんて何のために出ているのか、由利徹と同じくらいわからない。ちょいと注目は三原葉子。以前の妖女的な雰囲気はかき消えた、おでん屋台の小太り女将である。結構いい味、しみていた。突然『お早よう』と同じメロディが流れてきたので、てっきり音楽は黛敏郎かと思ったら、冨田勲だったとは意外。さて、粋なプログラムで光ってきた中野武蔵野ホールもいよいよなくなってしまうらしい。淋しいことだ。
#18「白昼の無頼漢」深作欣二/1961/ニュー東映東京/Apr. 10/中野武蔵野ホール
極悪タンバが集めた極悪強盗団の、ぐちゃぐちゃの内紛で自滅するまでを活写したモノクローム作品。襲う対象の、50万ドルを積んだNew York City Bankのバンに、銀行の名前がデカデカと書かれていたのがおかしい。この時代の深作や石井輝男作品は外国語、といっても英語か中国語だが、が乱れ飛び、シーンによっては字幕も入らない。タンバや健さんが異国語を喋るのを聞くのはいい気持ちである。強盗団は、白人、黒人、韓国人、日本人、それに黒人と日本人の混血から構成。白人が黒人を“サンボ”などと超差別発言をかますのに対し、韓国人に対する中傷はない。次々に死んでいくメンバーでも最後の方まで生き残っていたのが気に入った。それにしても、深作作品は、呉宇森作品と同様、女優(本作では久保菜穂子と中原ひとみ)がちっとも魅力的じゃないな。
#17「夜ごとの夢」成瀬巳喜男/1933/松竹蒲田/Apr. 3/ラピュタ阿佐ヶ谷
松竹時代の成瀬作品。レアである。小津安二郎でいえば『東京の女』〜『出来ごころ』の年。数年後、“小津は2人要らない”と城戸四郎に言われてP.C.L.に移るわけだ。主演はその頃の大スタア・栗島すみ子。相手役は、当時の松竹映画の顔・斎藤達雄である。女給・栗島、無職・斎藤に一人の子供あり。暗い世相を反映し、斎藤の職は見つからず、子供は交通事故に遭い、金の工面に困った斎藤は、犯罪に手を染めたあげく自殺する。奇妙なズームアップを多用した演出には困ったが、『恋も忘れて』のミッチーのごとく逞しい栗島すみ子の姿に、後年の高峰秀子が演じる役を重ね合わせるのであった。山猫軒でお食事して帰る。
#16「夫婦」成瀬巳喜男/1953/東宝/Apr. 3/ラピュタ阿佐ヶ谷
うちのPerfecTV!専用チューナをスカパーチューナに買い替えたきっかけは、日本映画専門チャンネルの“成瀬巳喜男劇場”の存在だった。そんなわけで、本作はスカパーで録って2度くらい観ている。上原謙演じる煮え切らない夫というのは『めし』と同じような設定であるが、本作は妻の杉葉子の方に色恋沙汰(というほどのことではないが)が起こり、上原が嫉妬する。結構好きな作品だ。(だから、すでに観ているのに観たわけだが。) 明るく、三國連太郎の誘惑もさらっとかわす杉葉子がいい。高堂國典にやらせる、妙なギャグも微笑ましい。ラピュタは半年以上ぶり。ちょうど期限切れになった会員証を更新した。
#15「悪い男」キム・ギドク/2001/韓国/Mar. 20/新宿武蔵野館1
観月ありさちょいと似の女子学生が、やくざに一目惚れされ、奈落の底に突き落とされる。一見、一方的に男が悪いように思われるが、冷静になってみれば女も悪い。本屋でエゴン・シーレの画集を1ページだけ万引きするし、そこに落ちていた財布をネコババする。赤線地帯にぶち込まれるスキはあったのだ。もちろん限りなくアンラッキーだが。男は無口だ。その理由は言葉では明かされないが、彼の咽辺りを走る瑕に気がつけば想像がつく。僕はこの監督を信用していないので、刺されても刺されても死なない男に首をかしげたりはしない。いかに観客を裏切ることができるかを考えた結果に違いない。さて、彼女は幸せになったのか? 答はおそらくイエスだ。幸せの基準は不変ではない。
#14「わが故郷の歌」バフマン・ゴバディ/2002/イラン/Mar. 20/岩波ホール
酔っぱらった馬の時間』のゴバディさん、本作もイラン・イラク国境のクルド人のお話だが、時はイラ・イラ戦争直後。歌手のじいさんが、元妻を探して息子二人と国境を越えてイラク領内へ。サダム・フセインによるクルド人虐殺の痕跡が残る各地を、噂をたよりに元妻を探して回る。その途中のエピソードは、当人たちはともかく、観ていて結構笑える。この辺りのバランス感覚は前作と同様だ。それにしても、みんなよく喋るなあ。ただ喋るだけじゃなく、人の話をちっとも聞いていないところがグレートだ。今回は“クルド人は1,000円”のサービスはなし。お上品な岩波ホールだもんね。
#13「東京原発」山川元/2002/『東京原発』フィルムパートナーズ/Mar. 19/新宿武蔵野館3
これを観るのはひとつの賭けだった。“カリスマ都知事”というのは明らかにシンタローからインスパイアされているに違いない。もし、シンタロー賛美ネオコン映画だったりすると、1,500円ドブに捨てることになる。でも、東京に原発を誘致するという発想は、その先どうなるのかどうしても気になる。で、結局観に行った。この映画で、役所広司にシンタローの姿を見る人がいたとしたら、東京もいよいよおしまいである。勝手に安心した。都庁舎特別会議室をおもな舞台とした半密室劇は中盤までは面白かったが、後半〜結末はいまひとつ。驚いたのは出てくるPCがdynabookだったこと。原発に対する疑問噴出の本作に東芝が協力しているなんて(いろんな意味で)いい度胸だ。役所広司が原発建設予定地としてあげるのは新宿西口中央公園。僕なら迷わず皇居にするがな。広いし。
#12「ヒマラヤ無宿 心臓破りの野郎ども」小沢茂弘/1961/ニュー東映/Mar. 19/中野武蔵野ホール★
ヒマラヤ、ヒマラヤ、どんなヤマ♪ 『アマゾン無宿 世紀の大魔王』の姉妹篇。なんと“進藤英太郎映画祭”なる企画での上映だ。偉いぞ、中野武蔵野ホール。目のつけ処が違う。進藤英太郎は“ボリショイの熊蔵”などというふざけた名前の毛むくじゃら男。筑波久子(宍戸錠の彼女だった元日活女優)とコンビを組んで、雪男ショウをキャバレーでやっている。コメディアンである。完全に主役の千恵蔵を喰っている。悪役のドクター・チャンは三島雅夫。全然中国人っぽくないぞ。こんなくだらない映画作ってばかりいるからすぐ潰れるんだ、ニュー東映。珍しいところでは、山東昭子が出演。水谷良重と(本物の)雪男が泊まるホテルは、いまはなきホテル・ニュージャパンでした。日立が全面的に協力。あの頃はおちゃめな会社だったのかな。
#11「盲獣VS一寸法師」石井輝男/2001/石井輝男プロダクション/Mar. 13/渋谷シネ・ラ・セット
石井輝男は世界に誇ることのできる大監督である。『網走番外地』、『東京ギャング対香港ギャング』、そして『江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間』。30余年振りに江戸川乱歩ものに帰ってきた本作は、増村保造版『盲獣』と当然比較するはずだった。だが、観終わったあとではどうでもよくなってしまった。単に石井輝男印があるというだけで価値がある。80歳近くなってプロデュース・監督・脚本・撮影までやってしまうパワーは何なのだろう? 惜しいのは『無頼平野』には出ていた石井映画の顔の一人・吉田輝雄がいなかったこと。タンバなぞ、ここでは不要である。ところで、この劇場。有楽町から渋谷に引っ越してきた。アミューズ系なので同じビルに入っているのだが、アデランスと同じ階にあるのはどうかなあ。
#10「涙女」劉冰鑒/2002/加=仏=韓/Mar. 13/シブヤ・シネマ・ソサエティ
中華圏の葬式・葬列は賑やかだ。悲壮感がない。ど派手なデコレーションと、数キロ先まで聞こえる音楽。そして泣き女。噂ではストリッパーも出るらしい。映画は、北京で借金を作って田舎に帰り、泣き女をやる薄情女の話。そうか、泣き女というのはダンサーも兼ねているのか。それにしても、こんな派手な葬式が出せるようになったのは、いつからなんだろう? やはり改革開放路線が始まってからかな? 主人公が天安門広場近くで海賊版ソフトを売るとき“CD, VCD”と言っているのに、“DVD”と平気で出てくる字幕にはびっくりした。そこは中国語じゃないんだから、観客にばれちゃうことくらいわかるはずだよな。
#9「ションヤンの酒家」霍建起/2002/中国/Feb. 28/シャンテ・シネ1
ヒットした『山の郵便配達』の監督の新作。というのは僕にはどうでもよくて、予告篇で見た重慶の街に誘われたのだ。最近では鞏俐の『たまゆらの女』にも出てきた重慶。長江の両岸を結ぶロープウェイ。ああ乗りたい。でも2作を観て思ったのは、『ルアンの歌』に出てきた武漢の方がより魅力的だということ。画面で見る限り、武漢の方が下流だけあって土地に開放感がある。双楊がやっているのは“久久酒家”なのに邦題は『ションヤンの酒家(みせ)』。なるほど。原題は『生活秀(Life Show)』。なるほど。日本でいえば『人生劇場』か? 主役(陶紅)の美人度に対する相手の男(陶澤如)のおっさん臭さが気になった。カモの首は美味しそうだったな。
#8「上海陸戰隊」熊谷久虎/1938/東宝東京/Feb. 28/フィルムセンター
ファシスト・熊谷久虎演出の、海軍省後援、海軍軍事普及部指導映画。やばそうである。これは観なくてはならん。時は1937年。共同租界と陸戦隊本部を防衛せんとする海軍陸戦隊の戦闘を執拗かつ薄っぺらに再現する妙な作品。かなりお金がかかっているようだが、聞き取れないせりふに暗い画面で、何が起こっているのかよくわからない。やはり単に“政府・軍部には都合の良い監督だった”というだけか。唯一の見どころは監督の義妹・原節子。旗袍(?)を着て日本兵にたてつく抗日姑娘だ。上海陸戦隊本部のビルは健在で、1999年に生で見た。ちょいと新丸ビルを思わせるバカでかいビルだった。中を探検しなかったのがいまになって悔やまれる。
#7「家族會議」島津保次郎/1936/松竹大船/Feb. 17/フィルムセンター
東京の男・佐分利信。大阪の男・高田浩吉。大阪の女・及川道子と高杉早苗。東京の女・立花泰子と桑野通子さま。この6人が東京と大阪を股にかけ演じる愛憎劇である。及川・高杉コンビが濃い。濃すぎる。勘弁していただきたい。ミッチーは佐分利信をドジでノロマな亀みたいに慕う変な女役。コップを手で握って割ってしまう怪力だ。みんなにしばしば緊張した顔をさせ、さらにズームアップしてしまう、この演出感覚は信じがたい。オールスタア映画で松竹俳優陣がたくさん出ているが、斎藤達雄も日守新一も見逃した。どこにいたんだろう? 本作にはどうやらリメイクがあるらしい。主役は高橋*コンちゃん*貞二。そちらを是非観たい。
#6「気まぐれな唇」ホン・サンス/2002/韓国/Feb. 14/テアトル新宿
主演のキム・サンギョンは、まもなく公開の『殺人の追憶』で、ソウルからやってくる謎の刑事をやっていた佐藤浩市みたいな男である。本作でも謎の人物を演じる。相手の女は原点を共有しながら対照的な、チュ・サンミとイェ・ジウォン。男は、一人目からは、蛇に遭遇したネズミのごとく逃げ、二人目を見つけると、自ら蛇となって追う。各章の冒頭に字幕を入れる、エリック・ロメールみたいなやり方で、ロメール爺さんのごとく男と女のやり取りが、テンポよく、かつジリジリさせられながら続いてなかなか面白かった。“サラン”は韓国語で愛。やっぱりサランラップというのは愛で包むという意味かなあ、などとくだらないことを、その言葉が出てくるたびに思う僕であった。(どうも違うみたいですね。⇒サランラップの歴史)
#5「二月的故事」小出正之/2003/日本=台湾/Feb. 14/短編映画館TOLLYWOOD
ビデオ作品。(実名は出てこないが)2ちゃんねるの恋愛サロン板(?)で悩みを打ち明ける台北に住む大学院生が主人公で、その板に書き込む数名が日本でのサイドストーリーを提供する。設定はなかなか面白いんだけど…。青年のやってることはストーカーぎりぎりで、思いを寄せる女の子(この子はなかなかかわいかった)を振り向かせようと卑怯な手段を使いまくる。登場人物すべてが空回りし、結局誰もハッピーになれずに終わる、妙な作品だった。呉米森が青年の兄役で出演。下北沢は十年ぶりくらいか? 雰囲気がほとんど変わっていないのに感心した。この映画館に来たのはもちろん初めて。われわれを除けば観客はひとり。経営は大丈夫なんだろうか?
#4「南京」(監督不明)/1938/東宝文化映画部/Feb. 13/フィルムセンター
“軍特務部指導”。ああ、恐ろしい。“皇軍の南京入城は、燦然と世界の歴史に残るであらう”。燦然と、はともかく、まさに歴史的な大悪事として世界中に知れ渡った南京陥落後の市内の様子を伝えるドキュメンタリー。“指導”により、当然、悲惨な残酷な事象はカットされ、ただ平和が訪れた旧首都が演出されている。正月を迎え餅をついたり、門松を作ったりする兵。難民収容所で日の丸の腕章を付けた中国人。これを見て覇気が上がる銃後の国民。プロパガンダという奴は、即効性は低いかもしれないけれど極めて強力な兵器である。亀井文夫の『小林一茶』が併映。二度観るほどではないので途中で出、ホームライナー逗子号(ぷちブルだ)で帰った。
#3「音樂大進軍」渡邊邦男/1943/東宝/Feb. 7/フィルムセンター
当然国策映画。古川緑波と渡辺篤が、南方への音楽慰問団を結成するために音楽家を口説いて回るというストーリー。古川緑波というコメディアンは、僕にはあまりなじみがない。近衛敏明と間違えそうだ。さきほどの『熱砂の誓ひ』の音楽は演歌・古賀政男だったのに対し、こちらはモダーン・服部良一。それで観ることにしたのだけれど、どこにも服部良一らしさが出ておらず残念。話もあまり楽しめなかった。オールスタア映画で、当時は大変ヒツトしたようであるが。川奈ホテルがロケ地としてまたまた登場。渡邊邦男お気に入りか? 当時は軍に接収され療養所になっていたようだ。あの建物自体は健在らしい。ぜひ一度お泊まりしたい。
#2「熱砂の誓ひ[前後篇]」渡邊邦男/1940/中国=日本/Feb. 7/フィルムセンター
ほぼ一月ぶりの映画。それが渡邊邦男という右翼監督の作品というのはいささか不本意ではあるが、長谷川一夫・李香蘭共演という華北電影と東宝の提携作品となれば観逃すわけにはいくまい。『支那の夜』では長谷川一夫が李香蘭をひっぱたくという、中国にとって国辱的なシーンがあった。本作も長谷川一夫が李香蘭をどついたりし、それでもひたすらに李香蘭は長谷川一夫を慕うという植民地主義的構図をもつ。悪者はとことん共産匪に設定されている。李香蘭の父親に進藤英太郎、伯父(叔父かも)に高堂國典。どちらも北京語を流暢に話していた。少なくとも進藤英太郎のは吹き替えには見えなかったな。長谷川一夫の父親・江川宇禮雄(兄役でもある)は川奈ホテルを設計したらしい。ということは、これは高橋貞太郎一家の話か?
#1「最後の恋、初めての恋」当摩寿史/2003/日本=中国/Jan. 10/シネスイッチ銀座
2004年のトップバッターは、またまた徐静蕾である。ときたま原田知世に見えたりする、相変わらず普通の女性だ。相手役は渡部篤郎。この名前を見ると、渡辺篤史(住宅ウォッチャー)を連想するのは僕だけだろうか? 実は渡辺篤史を思い出そうとすると渡辺篤を思い出してしまうのだが、これは僕だけかもしれない。オール上海ロケ。しばらく行っていない上海はますますバブルが進んでいる様子で、今度行ったときに街角で生煎が食べられるのか心配だ。脇に薫潔、陳柏霖となかなか豪華キャストではあったが、ストーリーは不治の病もの。これだけ書けばすべてがわかる永遠の紋切りで、しかも演出はベタベタときた。中国女性が日本男性に恋するという、戦前みたいな設定も気になる日中合作作品であった。これ、中国では公開されたの?

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Last update: 12/29/2004

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