[↓2024年]
2025年に観た映画の一覧です
- 星の見方(以前観たものには付いてません)
- ★★…生きててよかった。
- ★…なかなかやるじゃん。
- ○…観て損はないね。
- 無印…観なくてもよかったな。
- ▽…お金を返してください。
- 凡例
- #通し番号「邦題」監督/製作年/製作国/鑑賞日/会場[星]
- #34「音楽サロン」Satyajit Ray/1958/インド/Aug. 2/ル・シネマ渋谷宮下◯
- 没落していく地主の惨めな姿を最期まで描く、エネルギーというか執念のようなものを感じる作品。ある時点で自分の愚かさを素直に認め、立ち直ろうとする、というような紋切りではなく、最後までとことん落ちていく。ベンガル地方の美しい光景が映っているはずだが、デジタルリマスターをもってしてもそれを十分に感じることはできなかった。カラーだったらなあ。Chhabi Biswas演じる地主は、代々受け継いできた土地に胡座をかき、屋敷に音楽サロンをつくり著名な音楽家を招いては会を開く。どんどん目減りしていく財産。わかっていながら驕りと虚栄心で借金してまで散財を続ける一方、妻と息子が水難事故で亡くなってしまう。絶望の地主は、馬鹿にしていた隣人Gangapada Basuが成り上がり、著名なダンサーを自宅に新築した音楽サロンに呼んだことに憤慨し、残った財産をはたいてダンサーを自分の音楽サロンに招く。その席で隣人に恥をかかせ、勝ち誇る姿が悲しい。悲しいが同情はない。終盤のRoshan Kumariのダンスは圧巻だけれども、本物を撮っているからかカメラワークとしては凡庸に感じた。
- #33「主人公」Satyajit Ray/1966/インド/Aug. 2/ル・シネマ渋谷宮下◯
- 監督のオリジナルシナリオによる、映画スターを介した業界&社会チクリ作品。面白かった。Uttam Kumar演じる映画スターが面倒を避けるためCalcuttaからDelhi行き豪華列車に乗る。そこでグランドホテル的ストーリーが展開されるのだが、そっちより映画スターの過去や素顔が彼自身により語られていくのがメインパート。それを引き出すのがたまたま乗り合わせた、黒メガネの雑誌女性記者のSharmila Tagore。美人である。『あした晴れるか』のいづみさまである。なのに黒メガネをかけるとルチ将軍(IQ1300)に見えてくるのには困った。食堂車でのふたりの会話をとらえる移動カメラが楽しい。映画スターの想い出エピソードのひとつに『チャルラータ』のMadhabi Mukherjeeも出てたね。映画スター以外のサイドストーリーは結構謎だった。WWWWなる宗教団体は何かモチーフがあるのかも。列車から撮影した列車の猛進シーンに迫力あった。あの頃はコカインが合法だったのか。なんとも怖いね。
- #32「赤い柿」王童/1995/台湾/Jul. 27/K's cinema◯
- 『青い凧』と対照的、という考えがなんとなく浮かんできた。いまは亡き三百人劇場で観た前回から実に27年、デジタルリマスターで復活した王童の自伝的作品。1949年に上海から台湾に逃れた国民党軍司令官家族が、妻とその母を中心に逞しく生き11人の子供を育てていく姿を描いた3時間の大作。11人兄弟の6番目で、絵を描くのが好きな少年が監督だそうだ。11人って石雋(台湾の杉本哲太)、あんた、さすが将軍であるな。ところが、かなり事実に沿ったシナリオらしいので、家庭での無能ぶりも相当だったようだ。騙されて変な商売に手を出すところとか、世間知らずもいいところである。おばあちゃんは孫と稲垣浩の『決闘巌流島』を観に行く。台湾に移って日本好きになったのだろうか。そういう外省人も多いのかなあ。劉若英がかわいい。彼女の登場シーンだけ華やかだ。文英は変わらずでした。(嫌いじゃないよ)
- #31「チャルラータ」Satyajit Ray/1964/インド/Jul. 26/ル・シネマ渋谷宮下◯
- これまでなんとなく敬遠してきた巨匠。どうやら1本も劇場で観ていないようだ。今回の特集もさして興味なかったのだけど、予告篇を見て面白そうだったのと主人公らしい女性の顔が印象的だったので観てみることにした次第。というわけで、インド映画通なら誰もが知ってそうなことを“発見”する機会となった。まず驚いたのがカメラワーク。多用する移動やズームなど、勝手に静のイメージだったのがガラガラと崩れる。特に、ブランコに乗る主人公をブランコに載せたカメラで撮るようなことまでやるのに、思わず声が出そうになった。同居することになった夫の従弟に密かな想いを募らせていくインテリの妻という危ない設定のメロドラマも意外。原作はタゴールだし。その主人公である妻Charulataに目力の強いMadhabi Mukherjee。従弟Amalにスター扱いらしいSoumitra Chatterjee。ロケはほとんどないセット劇。見応えありました。
- #30「私たちが光と想うすべて」Payal Kapadia/2024/仏=インド=蘭=ルクセンブルク=伊/Jul. 26/ル・シネマ渋谷宮下◯
- カンヌでグランプリを獲った実質インド映画。ヒンドゥー教徒とムスリムの恋(ありがちな設定ではあるが)、結構大胆な性描写、女性の飲酒、野外での女性放尿シーン(まあこれは田舎に行けば普通か)、などなど。マラヤラムなので、こんな内容にも納得できる。一応全国リリースもしたようだが一般観衆の評判はどうだったのか興味ある。オレンジ色(正確にはサフラン色)の党と信者からは睨まれたろう。ムンバイの病院で働く、同居するふたりの看護師が主人公で、食堂のおばさんも加わり、女性三人がそれぞれのいまと将来を想い行動する。地上げで住処を追われる食堂のおばさん(なじみのある顔)が、マンション建設地に掲げられた、格差を肯定する広告看板に投石するのが痛快。そのおばさんの帰郷(Maharashtraの南の方)にふたりが同行するのはなぜだっけ。ラストに登場する海の家の能天気な店員がいい。で、あのドイツ製炊飯器はインドで使えるんだろうか?
- #29「白い町で」Alain Tanner/1983/瑞=葡=英/Jul. 20/ユーロスペース★
- 僕の脳みそはハルシネーションを起こしているらしく、探しても本作を当時(1986年のはず)観たという記録がない。そうだとすると、シネセゾン系の劇場で何度も見た予告篇の印象が“観た”と刷り込んでいるのだろう。でも、白いと思っていたカーテンは赤かった…。貨物船の機関士である男(Bruno Ganz)が、寄港したリスボンで船に戻らず留まる話。街が『ならず者』の香港と重なる。(坂ばかりなのにマカオを連想しないのはトラムの存在と教会の不在(というか映されない)からか。) 解放された男が、何をしたらよいかもわからず街を彷徨い、無理して(だと思う)楽しむ。バルの女と出会う。Super 8カメラで女を含めさまざまな風物を撮影し、スイスにいる妻に送る。いつまで経っても、男が何をしたいのかわからない。本人もわかっていない。妻も困惑する。この空気感が絶妙。そしてすべてを失くす。Super 8カメラを売った金でスイスへ帰る列車中、別の女に出会う。ないはずの8mm映像。なんだこの始まりのエンディングは。
- #28「マーヴィーラン 伝説の勇者」Madonne Ashwin/2023/インド/Jul. 12/109シネマズ港北◯
- 芝刈くん(Sivakarthikeyan)主演の、悪徳政治家をやっつけるヒーローもの、つまりインド映画としては基本ウケるテーマで楽しんだ。序盤のタミルダンスもご機嫌である。一方、主人公が気弱な漫画家というアイデアは面白いけど、内なる声に指示され動いて悪を倒すストーリーには若干のムリを感じた。その悪、Mysskin演じる公営集合住宅の建設費を横領して私欲を貪る悪徳大臣はほとんどやくざ。冒頭で“特定の政党や政治家とはまったく関係なく、万が一似ていても単なる偶然である”という字幕から、あからさまに誰かを連想することを期待したのだが、そんなことはなかった。タミル人には何か心当たりがあるのかもしれない。芝刈くんの内なる声はVijay Sethupathi(事前知識などなくても聞けばわかる)。無報酬で協力したらしい。彼が好きになる新聞社の副編集長は最初はKiara Advaniが予定されていたらしいが、若手のAditi Shankarに変更されてだいぶ地味になった。とはいえこのキャスト変更はBOX Officeには影響なかったろう。
- #27「オルエットの方へ」ジャック・ロジエ/1969/仏/Jul. 5/ユーロスペース★
- 15年前に観たときは160分という長尺に◯を付けた。インド映画にすっかり慣れたいま、時間は気にならず晴れて★に昇格である。『ぼくの伯父さんの休暇』も大好きだけど、こっちがヴァカンス映画の金字塔認定。Joëlle、Kareen、Carolineの三人娘が大西洋岸のSaint-Gilles-Croix-de-Vieで過ごす大はしゃぎの3週間を手持ちカメラで追う。3週間の長い休暇を語るのだから160分くらいかかるだろう。といっても大事件が頻発するわけもなく、Joëlleを好いている上司のGilbertが乱入して喜怒哀楽が生まれる。三人の泊まる家にベッドを得られず、庭でテント生活。KareenとCarolineにおちょくられ続け、釣ってきた魚を捌きながらのワインがぶ呑み。内気なところはシルヴァンと似てて、なかなかいいキャラだ。で、何度見てもCarolineを演じるCaroline Cartierがかわいい。ヴァカンスにはこういう女の子が必須である。
- #26「ハルビン」ウ・ミンホ/2024/韓国/Jul. 5/角川シネマ有楽町◯
- 1909年にハルビン駅で起こった伊藤博文暗殺事件を描いた、ロマンスなど微塵もない硬派作品。主役はもちろん安重根であり、これを大ヒットTVドラマ『愛の不時着』(見たことない)のヒョンビンが演じる。伊藤博文はなんと日本人が演じていて、それがリリー・フランキー。かつての千円札でお馴染みだった伊藤の肖像によく似た感じに仕上がっていた。どうやってオファーが行ったのかな。皇軍が中国映画ほど残虐に描写されていない(とはいえ肉弾戦の状況は凄まじいが)のは、日本人に対する意識が中国人と韓国人で微妙に違うことを示唆しているのかもしれない。大韓義軍内で展開される密偵をめぐる緊張のやりとりがエンターテイメントである。暗殺成功後、逮捕される際に安重根が “カリヤ、ウラ Корея Ура”と叫ぶのだが、あの時代、“朝鮮”ではなく“コリア”と自称していたのだろうか。あ、単にロシアではКореяと認知されていたのか。自己完結。
- #25「突然、君がいなくなって」Runar Runarsson/2024/アイスランド=蘭=クロアチア=仏/Jul. 1/ル・シネマ渋谷宮下◯
- アイスランド映画を観るのははじめてだと思う。ストーリーは興味深いし、登場人物の心情の描き方も優れていたのだけど、同一のBFを亡くしたふたりの女性主人公があんまりだったので、入っていけず。演出上、とても不思議だったのが、序盤の事故に向かうトンネル内のオレンジ色の光の列と終盤の夕日(?)に向かう波のオレンジ色の光の列が上下逆で対をなしているビジュアル。これは何を言いたいのだろう。これが読み解ければ、あるいは理屈を付けられれば、立派な映画評論家。監督の特異なセンスを感受できる者だけが、あの主人公ふたりの魅力に気づけるのかもしれないな。“美人”とまで言われてたので、アイスランド人と僕とは感覚がよほど異なるようだ。あ、もうひとつ不思議に思ったのが、ああいう若者はタトゥーを入れるものと思い込んでいるのだけど、彼らはひとりもそれがなかったこと。アイスランドに彫り師はいない、なんてオチじゃないよね。
- #24「灰となっても」Alan Lau/2023/香港=英=加/Jul. 1/シアター・イメージフォーラム◯
- 1997年7月1日からちょうど28年の日に観る、2019年の民主化デモを中心としたドキュメンタリー。監督は『時代革命』の撮影監督だったそうで、使用ビデオも一部被っているのかもしれない。2019年がメインではあるが、そこに至る流れとして、大躍進、返還、雨傘運動の映像も使われている。警察が市民を攻撃するのは、何度見ても悲しい。上映後、来日していた英国在住の監督へのインタビューがあった。メディアとしての監督を一人称として構成したこの作品では、メディアのあり方がクローズアップされてもいる。PRESSに対する警察の姿勢の変化とかも興味深い。最初、PRESSが中立である限り警察も何も言わないし、PRESSも手を出さなかった。しかし、あそこまでひどい警察の所業に対し中立でいることの葛藤は尋常ではなかったろう。我慢できずに市民を助ければ直ちに排除の対象だし、そのままでも多くがPTSDを患ったようだ。すっかり牙を抜かれたように見える香港はこれからどうなるのか。太秦にあっぱれお願いします。
- #23「フォーチュンクッキー」Babak Jalali/2023/米/Jun. 28/ヒューマントラストシネマ有楽町◯
- 無名な地名が原題だとキャッチーじゃないと判断されるのか、本作も『Fremont』からの改題。『Columbus』を見倣ってほしかった。初期のジャームッシュ(って、モノクロだし『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のことだよね)に似ているということだったが、確かに抑揚のなさとかの雰囲気が近いかな。アパートでひとり暮らしのFremontからBART (懐かしい)でSan Franciscoまで通いChina Townのフォーチュンクッキー工場で働く、母国で米軍通訳をしていてタリバン政権に代わってから国を脱出したというDonya。同僚の誘いも断る地味な生活を送っていたが、深圳出身の工場オーナーに気に入られ、クッキーに入れるメッセージ(Fortune)担当になる。精神カウンセラーに通うようになる。メッセージに自分の思いを託すようになる。“Desperate for a Dream”というメッセージに入れた自分の電話番号から、仕掛けられたプチロードムーヴィーが始まる。この先は書かないが、ハッピーになれる一品。
- #22「ルノワール」早川千絵/2025/日=仏=シンガポール=フィリピン/Jun. 21/横浜ブルク13◯
- 『PLAN75』は未見なのだけど、本作は予告篇を観て行く気になった。11歳の女の子が主人公で、時代は1980年代はじめかな。キャンプファイヤーでかかるのは『Rydeen』。エンドクレジットのユキヒロさんに泣ける。感受性豊かな女の子が大人の世界に触れるストーリーは、僕に『地下鉄のザジ』を想起させた。超能力に始まり超能力で終わる。人生に関わるエピソードが盛りだくさん、それらを担当する俳優陣は個性派揃い。リリー・フランキーは相変わらずマイペース。ギスギスした石田ひかりは『続・続・最後から…』そのものだし、怪しくおっとりな中島歩は『あんぱん』を引きずっている。もちろん河合優実も脇ながら見逃せない。主人公を演じた鈴木唯も将来大物個性派俳優に成長しそうだね。1980年あたりをロケ撮影するのはいろいろ苦労が多いと推察されるが、うまく処理していたように見えた。あの頃にはなかったステンレスボディの電車もぼかされていた。さて、フキちゃんは歳をとったことを実感しただろうか。
- #21「ヴィクラム」Lokesh Kanagaraj/2022/インド/Jun. 1/新宿ピカデリー◯
- 初回は英語字幕だったが、今回は日本語字幕付。やはり観るのが断然楽。一方で、インド人観客皆無なのは寂しい。そういえば、本作の続篇はどうなって…、まだ公開(完成も?)していないのか。本作中では『Kaithi』のDilli (Karthi)への言及があり、最終盤に登場するRolex (Suriya)との兄弟共演もありか、と思っているわけだが、残念。気を取り直してこいつを観なおすことにする。Kamal Haasan、Vijay Sethupathi、Fahadh Faasilという主役級3人が、自分のミッションとファミリー(ここがインド映画)のためガチで戦う。今回も鮮烈な印象を残すのはメイドのTina。Kamal HaasanのいたBlack ops squad First batchメンバーであり、Kamal Haasanの孫を守るため命を張る。特撮とかスタントを使っているようには見えない、アッパレなおばさんだ。同期のおっちゃん達もかっこよかったな。Fahadh Faasilといえば、映画には関係ないけど、がんばれNazriyaちゃん。
- #20「季節はこのまま」オリビエ・アサイヤス/2024/仏/May 18/ル・シネマ渋谷宮下◯
- パリ郊外にある監督の実家で撮影し自身の想い出を散りばめながら、COVIDでロックダウンされた環境下での兄弟の暮らしをユーモラスに描いた、なんとも不思議な懐かしさを感じる作品。監督の分身を演じるのはバンサン・マケーニュ。潔癖症で、徹底した対策を取るのが笑えないのが笑える。程度こそ違うだろうが、誰もが経験しているはず。帰宅した途端、真っ裸になってすべてを洗濯機に放り込んで洗うとか…、ないか。回想シーンでFIAT 126が登場。フラ車じゃないんだ。現代シーンで登場人物たちが乗るのはトヨタのハイブリッド。フラ車じゃないんだ。感心(?)したのが、弟(ミーシャ・レスコ)がクレープをTawaで焼いていたこと。Tawa、ドーサが焼けるならクレープだって焼けるわな。この弟はAmazonを名指しで猛烈に批判してた。これも監督の姿勢だろうな。いや、ほんとに実の弟がそうなのかもしれないけど。分身の現恋人と前妻は登場したけど、張曼玉に相当するひとは残念ながら出てこなかった。
- #19「けものがいる」ベルトラン・ボネロ/2024/仏/May 17/ヒューマントラストシネマ有楽町◯
- 2044年、2014年、1910年と、3つの時にまたがる、女と男の因縁話。女はLéa Seydoux、男はGeorge MacKay(目と目の間が狭い苦手なタイプ)である。SFだが、よくあるタイムスリップではなく転生もの。2044年は世界をAIが支配し、人間そっくりの人形がいたり、ひとから感情を消去する技術があったりする。あと20年足らずでそんな世界が来るのか。原作は何年に発行されたのかな。1910年のシーンはフィルム撮影するなど、“時”ごとに凝ったつくりで、その間の移動も含めなかなか面白かった。2044年の女は、日替わり(?)でテーマの年を変えるクラブに出かける。音楽はもちろん、客のファッションまで日替わり(?)なのが面白い。1972年の日には、なんとアダモの『雪が降る』がかかっていた。Léa Seydouxといえばすきっ歯だけど、これはやはりJane Birkinを意識して矯正しなかったんだろうか。paris blueに『雨が降る』という歌があったな。あれは『雪が降る』を意識していたのかな。当時はそんなことを思いつきもしなかったが。
- #18「来し方 行く末」劉伽茵/2023/中国/May 17/シネスイッチ銀座◯
- 『鵞鳥湖の夜』の胡歌主演の、悪いひとが出てこない、お涙頂戴とほっこりの中間的作品。経験的に(あくまで経験的に)、女性監督だとこういう映画の割合が高いと思う(Unconcious Biasでないことを願う)。脚本家志望ながら弔辞ライターで生計を立てている独身男性の胡歌。その同居人に『西湖畔に生きる』の息子だった吴磊。胡歌とさまざまなクライアント(遺族とは限らない)との交流の積み重ねを通して、彼の本来の志望や田舎の両親との距離が変化していく。その過程で、謎の同居人の正体も明らかになってくる。“北京では20分ではどこにも行けない”というが、20分じゃ1ブロック歩くのも厳しいよね。少なくとも自転車必須。とにかくスケールの大きい北京である。クライアントのひとり、齐溪はなかなかよかった。胡歌は要潤に似てるね。
- #17「Thudarum」Tharun Moorthy/2026/インド/May 3/INOX Garuda Mall◯
- Bangalore(カンナダ語圏)でマラヤラム語映画を観る(英語字幕付き上映)。主演はMohanlal。特にファンではないが、おっさんだが、大スターである。Mohanlalが演じるのは黒いアンバサダーで白タクみたいな商売を田舎町でやっている、アンバサダー乗りなのに“ベンツ”と呼ばれているおっさん。恩人のため都会(Madras?)に行っている間に、愛車は警察に押収され、息子は失踪、薬物取引の被疑者となっていた。息子を探すため個人捜査を始めるベンツと、名誉退職を控えた極悪CI (Prakash Varma)の対決が始まり、この闘いが終わるまで映画はつづく。CI含む警察を追い詰めるMohanlalの行為はもはやVillainのそれで、凄まじい。それくらいやらないとPrakash Varmaには勝てなかったということだ。疲れたけど、おもしろかった。以前通いに通ったGaruda MallのINOX。PVRと合併しても、オープニングの爆音ビデオがなくなった以外何も変わっていなかった。
- #16「Retro」Karthik Subbaraj/2026/インド/May 1/AAA Cinemas◯
- Hyderabad(テルグ語圏)でタミル語映画を観る(英語字幕付き上映)。主演は“The One” Suriya。特にファンではない。元同僚のDさんに似ている。Suriya、ムキムキだけどちっちゃいね。暴力描写が過剰で引いてしまうけど、ダンスシーンがご機嫌で、やはりタミル映画はいいなと思ってしまう。何曲あっただろう。Gold Fishなるコードネームで呼ばれる何かをめぐっての犯罪組織や政治家(Prakash Raj)の暗躍を基調として、お腹にKrishnaマークのアザをもつ笑えない男(Suriya)が笑うまでが前半、舞台をアンダマンに移しての後半で狂人父子(父親はNassar)が牛耳るゴム農園に乗り込んだSuriyaが因縁の父子に落とし前をつける話は、インド的でおもしろかった。が、なんといっても、Suriyaの相手役を演じるPooja Hedgeが圧倒的によかった。美しい。彼女はいまBhimaのアンバサダーをやってるので街角でも結構(ポスターなど)見かけた。(TanishqのNayanもね)
- #15「カップルズ」楊德昌/1996/台湾/Apr. 20/TOHOシネマズ・シャンテ・シネ3★
- Wait 一下。初見から28年あまり。4Kリストアされて『麻將』が、あの頃の台北が帰ってきた。楊德昌お得意の群像劇。ホンコン(張震)が連れ込む女を共有する四人組(麻雀だ)に、ロンドンから男・マーカスを追ってきたフランス人・マルト(Virginie Ledoyen)が現れ、複数の話が絡み合いながら進行する。ホンコンが口説いた年増女が彼より上手だったエピソードがコメディーとしての本作の頂点だな。少なくとも呉念眞と王柏森のやくざのボケぶりより面白い。ケータイがでかい。マーカスは言う、“21世紀は帝国主義の時代になる”と。楊德昌は預言者か? ルンルン(柯宇綸)がマルトのために屋台で買う蔥抓餅がおいしそう。ラストシーンでルンルンがマルトに再会するのはおなじみ鼎泰豊の前。ふたりのうしろに見慣れた店が映っていて、おばちゃんが順番待ちの客を呼ぶ声が延々と聞こえる。エンディングロールが始まっても。台北行きたいね。
- #14「メイデン」Graham Foy/2022/加/Apr. 20/シアター・イメージフォーラム◯
- 名電ではなく、舞殿でもなく、MAIDEN。少年が至る所に落書きするワードである。その意図は不明だが、彼の存在の証に違いない。バディと、ピンが1本外れたような青春の刹那を突き進む少年の姿に共感はしないものの、青春時代にはそういうこともあり得るんじゃないか。きっとみんなそう思う。スケボーで疾走するシーンや、死んだ猫を川に流すシーン、鉄橋を渡る貨物列車。どれも映像が印象的だ。訪れる、ある意味予感できた、少年の突然の死。立ち直れず、彼の面影を追うバディ少年。そして、こちらも突如もたらされる神経質そうな同級生少女の失踪。からの、かつての彼女の日常と親友からの断交、そして少年との不思議な時間と、映画はどんどん観客をその世界に引きずり込んでいく、なかなか得がたい体験。Make Canada great again. バディ少年の頭の形とヘアスタイルがとてもユニークだった。
- #13「デーヴァラ」Koratala Siva/2024/インド/Apr. 6/ローソン・ユナイテッドシネマSTYLE-Sみなとみらい
- ひさしぶりにアイテムナンバーばりばりのテルグ映画を観た。主演はダンスがお得意のNTR Jr.。TNとAPの境で密輸品の陸上げを請け負う犯罪集団村落が舞台のアクションで、海上シーンがたくさんある。サメも出てくる。NTR Jr.は犯罪集団のボス的存在で、ライバル(Villanといってもいい)がSaif Ali Khan。どうした、Bollywoodにはしごとがないのか。テルグ語喋れんのか、と思ったらP. Ravi Shankar (おおっ)がdubbingしてた。アイテムナンバーでNTR Jr.のお相手はJanhvi Kapoor。どうした、Bollywoodにはしごとがないのか。Srideviが泣いてるぞ。色気を売りにしているのだろうが、ダメダメだ。んで、そもそもJr.が二役のメインストーリーがおもしろくない。導入部の話はどうなったのだ。というところで、最近多いパターンの、最後にPart 2を予告して終わり。この状況で次作で何を語るのか(主演はJr.なのか)気になるけど、観ない確率が高い。
- #12「ジュ・テーム、ジュ・テーム」アラン・レネ/1968/仏/Mar. 15/角川シネマ有楽町◯
- アラン・レネのSF? 行く行く、というわけで3週間ぶりの映画。今年はペースが遅い。『惑星ソラリス』にさきがけること4年、過去の女性に会う男の物語である。自殺未遂から回復した男が、ある研究所が開発したタイムマシンの人間第1号の実験台になる。まだ初期のため、タイムマシンといっても1年前に1分だけ行って帰ってくるという限定的な機能、のはずだったのだが、なぞの液体T4を大量投与された男は、何ヶ所もの時点に断片的に飛び続け、しかもそこにはかつての妻(?)がいた。最初はワケわかんないけど、断片を集めることで、この男と妻のかつての生活がモザイクのように浮かび上がってくるしかけ。うん、おもしろい。かつ、映像がいい感じ。1960年代のフランスの街とくるまが楽しい。中に男はいるのかいないのか、シュレディンガーの猫みたいなタイムマシンの変な形もシュールだ。興行的には失敗して製作費は赤字だったらしいが、愛すべき映画。
- #11「ジェイラー」Nelson/2023/インド/Feb. 22/シネ・リーブル池袋
- 日本語字幕付だし観てもいいかなと思って二度目の鑑賞(→一度目)。実りのない3時間だった。つまり、一度目で楽しんだら、あとには何も残っていなかった、ってとこか。シナリオに面白みがない(意外性はリピートには通用しない)。ラジニはやはりスーパースターだからして、正しい正義の味方であってもらいたい。Mirnaa Menonが地味。Yogi BabuやVTV Ganeshの登場シーンはまったく面白くない(インド人には面白い?いや、ダウト。Rajendranだけ認める)。日本語字幕は、多言語であることをうまく伝えようとする意思は感じられなかったし、孫の嫌いなピーマンを“緑の野菜”とかイドゥリに付ける“ミントのチャトニー”を“緑の”(だったかな?)とか省略しすぎ。唯一の楽しみは、やはり豪華ゲストだ。Dr. Shiva Rajkumarは別格のかっこよさで、Mohanlalの趣味悪なやくざな格好もなかなか似合っていた。ただし、タマちゃんの太り具合はかなり心配。さあ次作に期待、タライヴァー。
- #10「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」Yuval Abraham, Basel Adra, Hamdan Ballal, Rachel Szor/2024/ノルウェー=パレスチナ/Feb. 22/シネ・リーブル池袋◯
- ヨルダン川西岸地区のマサーフェル・ヤッタで起こる不条理を広めるためのドキュメンタリー。みなさん、ぜひ観てください。パレスチナ人の居住地区を一方的に“軍用地”に決め、それを法的根拠に住民を強制的に立ち退かせようとするイスラエル軍と入植者たち(というかイスラエル)の横暴には憤り以外にない。この姿をスマートフォンで撮影しSNSに流す地元民Baselとイスラエル人のYuvalの友情には、どうしようもない溝が存在していて切ない。しかし、ふたりとも勇敢かつ賢い。感情に振り回されることなく、逮捕を避け、とにかく現実を世界に知ってもらうことを手段として戦っている現代型の活動家だ。アメリカをバックにもつイスラエルのならず者ぶりは、国家間では止められない気がする。悲しいことだが、このふたりのような活動が突破口になれば、と切に願う。でないと、この延長線上には、人類自滅しかないのではなかろうか。コロナ、ウクライナ、と緊急事態が続きなりふり構わぬ対応で、地球温暖化対策やSDGsはどこに行ってしまったの?
- #9「銀幕の友」張大磊/2022/中国/Feb. 22/シネ・リーブル池袋◯
- たった25分のボーイ・ミーツ・ガール映画。時は1990年、所は中国のどこか地方の工場。そこの事務所で働くわれらが周迅。北京で開催されていたアジア大会も終わり、工場内のひとの関心は映画上映会。チケットを配付する周迅。そこに詩人・王一博がどこかから帰ってきて工場の友人を訪ねる。ふたりのほんのいくつかのやり取り。詩人は友人に会い旅の終わりを告げ、彼からチケットをもらい上映会にやってくる。もぎりの周迅。言葉を交わすふたり。他の観客に彼女との関係を問われた元詩人は“我的朋友”と答える。上映会では『大人はわかってくれない』がかかっている。ふたりにも静かにヌーヴェルヴァーグがやってきた。というほのぼのとするストーリーは観る者を微笑ませる。敢えて書けば、詩人が放浪をやめたのと、前年のできごとはまったく無関係なのだろうか。わからない。アジア大会クロージングの歌には、“つぎは広島で会いましょう”というフレーズが入っていた。あの時代、中国からどれほどのひとが海外に行けたのだろうね。
- #8「聖なるイチジクの種」Mohammad Rasoulof/2024/イラン=独=仏/Feb. 15/kino cinema横浜みなとみらい★
- 深刻かつシリアスな主題なのにエンターテイメント性もしっかり組み込まれた、とても観応えのある作品。2022年のクルド人女性の不審死から起こった反イスラム政府デモを背景に、司法関係の役所に勤める男の家庭崩壊劇。SNSにポストされたものなどリアル動画を取り込み、迫真度を増している。イスラム教が男性と比較して女性の権利を著しく制限しているのを“神の法”で片付けるイスラム政府とそれに抵抗する女性の構図が、男の家庭に父と妻・娘の関係としてじわりと持ち込まれ、デモ参加者を裁く側の父親が、同じ目線で妻と娘たちを裁こうとする狂気が加速度的に高まっていく。カーチェイスあり、ホラーありの後半の展開にクラクラした。逃げる母娘と追う父親の遺跡での息づまる立体鬼ごっこは『ドラゴンへの道』を思い出させた。複雑な感動。監督はイランを脱出したものの、夫婦を演じた元々反政府的な俳優は出国禁止となっているらしい。
- #7「ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件」莊文強/2023/香港/Feb. 11/TOHOシネマズ新宿◯
- 1970年代〜香港返還直前を舞台に、大陸からやってきた梁朝偉が悪の限りを尽くす。佳寧集團の栄枯盛衰という実話ベース。梁朝偉に対峙するのが廉政公署の捜査官・劉德華という『インファナル・アフェア』コンビ。梁朝偉だと観客がこの極悪主人公をとことん憎めないのが本作最大の問題だと思う。株価操作とインサイダー取引の狡さというのは、ほんと許せないのでがんがん取り締まってもらいものだけれど、当時の香港の警察システムはザルだったんだろな。どこまで史実に忠実なのかはわからないが、明らかに怪しいのに摘発できずあそこ(RockyのK.G.F並み)まで大きくなるのは想像の域をはるかに超えている。税金は払っていたんだろうか? あの時代の香港はCGで再現しているのだろう。知っているひとには懐かしく感じられそうだった。脇にも懐かしい顔が何人も見られたが、なかでもびっくりしたのは袁詠儀。いつ以来だったろう。
- #6「映画を愛する君へ」アルノー・デプレシャン/2024/仏/Feb. 1/ヒューマントラストシネマ渋谷◯
- デプレシャン監督のこころに残る作品を引用しながら、ストーリー仕立てで自分の辿ってきた映画人生を追想する、普段の同監督作品からは性質が異なるものの、雰囲気はいつものデプレシャン映画。マチュー・アマルリックも出てくるしね。ときどき本人も登場する。映画人が、“映画大好き、映画が人生だ”と訴えるの、静かに流行っている気がするな。演劇、映画、テレビそれぞれにおける、メディアと観客の立場の違いはわかりやすい。演劇は観客の役割が重いしテレビは落ち着かない。やはり映画が一番だ。現実をスクリーンに投影したとき何が起きるか。観客ひとりひとりの2時間に、凝縮された別世界の経験がはめ込まれるのである。あいにく、まもなく忘れてしまうのだけどね。シネ・ヌーヴォが写ったり、日本の童謡合唱が聞こえたり(小津?)、『侠女』が引用されたり、盛りだくさんで、お腹いっぱいになった。監督は一体何本の映画を観てるんだろう。
- #5「Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり」王禮霖/2023/マレーシア/Feb. 1/ヒューマントラストシネマ有楽町★
- 李心潔がSNSで宣伝してた、彼女のプロデュースものがついに日本に来た。KLのPuduに住む吳慷仁と陳澤耀の身分証を持たない兄弟が社会で這いあがろうともがく悲劇で、手話も含め、マレー語、北京語、広東語、英語(タミル語はなかった気がする)が飛び交う多言語作品だが、沈黙が最も強い印象を残す。驚きの展開、何かしらほっとさせるエンディング。ヤスミンがいないマレーシア映画界も期待できるぞ。いわゆるBL映画ではないが、『ブエノスアイレス』への笑っちゃうくらいのオマージュがある。滝の走馬灯の向こうでふたりが踊るシーン(流れるのは鄧麗君ではない歌手の唄う『千言萬語』)と、陳澤耀が吳慷仁の肩で眠るバスのシーン。片山凉太の音楽はよかったな。ふたりを助けようとするNGO職員の林宣妤と、吳慷仁と心を通わせるミャンマー娘の周雪婷、どちらも可愛かった。吳慷仁はパパノエルのシェフ、陳澤耀は坂口京子に見えてしかたなかった。
- #4「満ち足りた家族」ホ・ジノ/2024/韓国/Jan. 25/kino cinema横浜みなとみらい◯
- 久しぶりのホ・ジノ。何してたのかな? 期待して観に行った。行き着いた先はこれか。題材は興味深い、人間の本質を突くもの。デキは最近の韓国映画そのもので、単純に面白かった。監督の名前を見なければよかったかも。高価なマセラティを事故らせるなんて、らしくない。ソル・ギョング、チャン・ドンゴン兄弟の立場の逆転は予想できるものだし、彼らの、事件を起こすZ世代の息子、娘の不気味さ、冷血さも目新しいものではない。是枝版が観たいな。兄弟のくるまの格差には笑った。勤務医だってそれなりに高収入だろうに、弁護士との差があんなにあるとは。邦題に異議あり。『満ち足りた』なんて、冒頭から明らかに違うじゃん。原題や英題の『普通の』からこれを導くセンスがわからない。いろいろ文句になってしまったが、繰り返す。映画としては面白かった。キム・ヒエとクローディア・キムという女優もそれぞれ美しく&熱演だったしね。
- #3「チェンナイの夜」Lokesh Kanagaraj/2017/インド/Jan. 19/キネカ大森◯
- インディアンムービーウィークの1本。待望の字幕、しかも日本語字幕付での『Maanagaram』鑑賞である。結果としては大満足で、前回は言葉がわからない故の誤解がいくつもあったことも明らかになった。SriがTrichyからChennaiにやってきた理由もRegina Cassandraが彼を入社させようとする理由も、Sundeep Kishanを入れた三角関係にならない理由もわかった。やはりシナリオがいい。Rowdy志望のRamdossがさらう対象を間違えるある意味紋切りの間抜けな誘拐事件を軸に、Sundeep Kishanと、Sriと、同じくChennaiに出てきてキャブドライバーになったばかりのCharleと、息子を誘拐された大ボスMadhusudhanがさまざまなすれ違いに振り回されていく。どのスレッドも結末を見せないのがニクい。一番かっこいいのはMadhusudhanだな。愛車はTATA傘下のJaguarだった。誘拐された息子は、なぜEgg biryaniよりCurd riceがよかったのだろうか。Egg biryaniおくれ。
- #2「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」鄭保瑞/2024/香港/Jan. 18/新宿バルト9◯
- 往年の香港巧夫電影と黒社会ものを合体させた、なんとも懐かしい香りのする作品。舞台は油麻地の果物市場と九龍城砦。(香港初訪問が1995年でまだ啟德機場ではあったものの九龍城砦に踏み込む機会はなかったのだが、敢えて、)セットのリアリティがすばらしい。ネオン華やかな彌敦道の光景にも感激した。ここで、古天樂、任賢齊、洪金寶、郭富城といった懐かしいメンツが壮絶なアクションを繰り広げる。動作指導は流石の谷垣健治。物語の中心は林峯、劉俊謙、胡子彤、張文傑の次世代4人組が、洪金寶の手下で九龍城砦を牛耳った極悪の気功使いを倒す。最後まで楽しめた。劇場もバラエティ豊かに満席で、みんなこういう映画を待っていたと思われた。香港で大ヒットしたのも、再現された80年代の街の姿も併せ、頷ける。洪金寶はまだまだ現役だね。古天樂がマツケンにしか見えなかったのが個人的には笑えた。え、続篇『九龍城寨之龍頭』があるの?
- #1「5 No. Swapnomoy Lane」Manasi Sinha/2024/インド/Jan. 3/Basushree Cinema (コルカタ)◯
- せっかくコルカタに来たのでベンガル語作品、というわけではなく、Basushree Cinemaに入ってみたいという理由での選択なので、映画には期待していなかった。が、意外にも英語字幕付だったのでちゃんと観た。残念ながらやはり映画としては面白みにかけるものの、古きよきコルカタを残したいという意図は伝わってきた。Calcuttaと呼ばれた首都時代の建築物はどれも壮大で渋い。それらがどんどん建て替えられている状況は経済発展の必然の過程ではあるが、経済発展がひと段落したときに後悔しないよう、いまから手を打ってもらいたいものだ。家長の死去に伴い手放した古い家をノスタルジーから買い戻そうと若い世代が奮闘するこの作品の形式はほのぼのファミリードラマであるが、主役はそのファミリーに加えその住居そのもので、コルカタ住民には訴えるものがあると思えた。客席はまばらだったけどね。Basushree Cinemaは期待以上の素晴らしさだった。日本にもBookMyShowが欲しい。
[←先頭][↓2024年]
Updated: 8/3/2025
Copyright ©2025 Jinqi, All Rights Reserved.
|