[↓2024年]

2025年に観た映画の一覧です

星の見方(以前観たものには付いてません)
★★…生きててよかった。
★…なかなかやるじゃん。
○…観て損はないね。
無印…観なくてもよかったな。
▽…お金を返してください。
凡例
#通し番号「邦題」監督/製作年/製作国/鑑賞日/会場[星]

#15「カップルズ」楊德昌/1996/台湾/Apr. 20/TOHOシネマズ・シャンテ・シネ3★
Wait 一下。初見から28年あまり。4Kリストアされて『麻將』が、あの頃の台北が帰ってきた。楊德昌お得意の群像劇。ホンコン(張震)が連れ込む女を共有する四人組(麻雀だ)に、ロンドンから男・マーカスを追ってきたフランス人・マルト(Virginie Ledoyen)が現れ、複数の話が絡み合いながら進行する。ホンコンが口説いた年増女が彼より上手だったエピソードがコメディーとしての本作の頂点だな。少なくとも呉念眞と王柏森のやくざのボケぶりより面白い。ケータイがでかい。マーカスは言う、“21世紀は帝国主義の時代になる"と。楊德昌は預言者か? ルンルン(柯宇綸)がマルトのために屋台で買う蔥抓餅がおいしそう。ラストシーンでルンルンがマルトに再会するのはおなじみ鼎泰豊の前。ふたりのうしろに見慣れた店が映っていて、おばちゃんが順番待ちの客を呼ぶ声が延々と聞こえる。エンディングロールが始まっても。台北行きたいね。
#14「メイデン」Graham Foy/2022/加/Apr. 20/シアター・イメージフォーラム◯
名電ではなく、舞殿でもなく、MAIDEN。少年が至る所に落書きするワードである。その意図は不明だが、彼の存在の証に違いない。バディと、ピンが1本外れたような青春の刹那を突き進む少年の姿に共感はしないものの、青春時代にはそういうこともあり得るんじゃないか。きっとみんなそう思う。スケボーで疾走するシーンや、死んだ猫を川に流すシーン、鉄橋を渡る貨物列車。どれも映像が印象的だ。訪れる、ある意味予感できた、少年の突然の死。立ち直れず、彼の面影を追うバディ少年。そして、こちらも突如もたらされる神経質そうな同級生少女の失踪。からの、かつての彼女の日常と親友からの断交、そして少年との不思議な時間と、映画はどんどん観客をその世界に引きずり込んでいく、なかなか得がたい体験。Make Canada great again. バディ少年の頭の形とヘアスタイルがとてもユニークだった。
#13「デーヴァラ」Koratala Siva/2024/インド/Apr. 6/ローソン・ユナイテッドシネマSTYLE-Sみなとみらい
ひさしぶりにアイテムナンバーばりばりのテルグ映画を観た。主演はダンスがお得意のNTR Jr.。TNとAPの境で密輸品の陸上げを請け負う犯罪集団村落が舞台のアクションで、海上シーンがたくさんある。サメも出てくる。NTR Jr.は犯罪集団のボス的存在で、ライバル(Villanといってもいい)がSaif Ali Khan。どうした、Bollywoodにはしごとがないのか。テルグ語喋れんのか、と思ったらP. Ravi Shankar (おおっ)がdubbingしてた。アイテムナンバーでNTR Jr.のお相手はJanhvi Kapoor。どうした、Bollywoodにはしごとがないのか。Srideviが泣いてるぞ。色気を売りにしているのだろうが、ダメダメだ。んで、そもそもJr.が二役のメインストーリーがおもしろくない。導入部の話はどうなったのだ。というところで、最近多いパターンの、最後にPart 2を予告して終わり。この状況で次作で何を語るのか(主演はJr.なのか)気になるけど、観ない確率が高い。
#12「ジュ・テーム、ジュ・テーム」アラン・レネ/1968/仏/Mar. 15/角川シネマ有楽町◯
アラン・レネのSF? 行く行く、というわけで3週間ぶりの映画。今年はペースが遅い。『惑星ソラリス』にさきがけること4年、過去の女性に会う男の物語である。自殺未遂から回復した男が、ある研究所が開発したタイムマシンの人間第1号の実験台になる。まだ初期のため、タイムマシンといっても1年前に1分だけ行って帰ってくるという限定的な機能、のはずだったのだが、なぞの液体T4を大量投与された男は、何ヶ所もの時点に断片的に飛び続け、しかもそこにはかつての妻(?)がいた。最初はワケわかんないけど、断片を集めることで、この男と妻のかつての生活がモザイクのように浮かび上がってくるしかけ。うん、おもしろい。かつ、映像がいい感じ。1960年代のフランスの街とくるまが楽しい。中に男はいるのかいないのか、シュレディンガーの猫みたいなタイムマシンの変な形もシュールだ。興行的には失敗して製作費は赤字だったらしいが、愛すべき映画。
#11「ジェイラー」Nelson/2023/インド/Feb. 22/シネ・リーブル池袋
日本語字幕付だし観てもいいかなと思って二度目の鑑賞(→一度目)。実りのない3時間だった。つまり、一度目で楽しんだら、あとには何も残っていなかった、ってとこか。シナリオに面白みがない(意外性はリピートには通用しない)。ラジニはやはりスーパースターだからして、正しい正義の味方であってもらいたい。Mirnaa Menonが地味。Yogi BabuやVTV Ganeshの登場シーンはまったく面白くない(インド人には面白い?いや、ダウト。Rajendranだけ認める)。日本語字幕は、多言語であることをうまく伝えようとする意思は感じられなかったし、孫の嫌いなピーマンを“緑の野菜”とかイドゥリに付ける“ミントのチャトニー”を“緑の”(だったかな?)とか省略しすぎ。唯一の楽しみは、やはり豪華ゲストだ。Dr. Shiva Rajkumarは別格のかっこよさで、Mohanlalの趣味悪なやくざな格好もなかなか似合っていた。ただし、タマちゃんの太り具合はかなり心配。さあ次作に期待、タライヴァー。
#10「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」Yuval Abraham, Basel Adra, Hamdan Ballal, Rachel Szor/2024/ノルウェー=パレスチナ/Feb. 22/シネ・リーブル池袋◯
ヨルダン川西岸地区のマサーフェル・ヤッタで起こる不条理を広めるためのドキュメンタリー。みなさん、ぜひ観てください。パレスチナ人の居住地区を一方的に“軍用地”に決め、それを法的根拠に住民を強制的に立ち退かせようとするイスラエル軍と入植者たち(というかイスラエル)の横暴には憤り以外にない。この姿をスマートフォンで撮影しSNSに流す地元民Baselとイスラエル人のYuvalの友情には、どうしようもない溝が存在していて切ない。しかし、ふたりとも勇敢かつ賢い。感情に振り回されることなく、逮捕を避け、とにかく現実を世界に知ってもらうことを手段として戦っている現代型の活動家だ。アメリカをバックにもつイスラエルのならず者ぶりは、国家間では止められない気がする。悲しいことだが、このふたりのような活動が突破口になれば、と切に願う。でないと、この延長線上には、人類自滅しかないのではなかろうか。コロナ、ウクライナ、と緊急事態が続きなりふり構わぬ対応で、地球温暖化対策やSDGsはどこに行ってしまったの?
#9「銀幕の友」張大磊/2022/中国/Feb. 22/シネ・リーブル池袋◯
たった25分のボーイ・ミーツ・ガール映画。時は1990年、所は中国のどこか地方の工場。そこの事務所で働くわれらが周迅。北京で開催されていたアジア大会も終わり、工場内のひとの関心は映画上映会。チケットを配付する周迅。そこに詩人・王一博がどこかから帰ってきて工場の友人を訪ねる。ふたりのほんのいくつかのやり取り。詩人は友人に会い旅の終わりを告げ、彼からチケットをもらい上映会にやってくる。もぎりの周迅。言葉を交わすふたり。他の観客に彼女との関係を問われた元詩人は“我的朋友”と答える。上映会では『大人はわかってくれない』がかかっている。ふたりにも静かにヌーヴェルヴァーグがやってきた。というほのぼのとするストーリーは観る者を微笑ませる。敢えて書けば、詩人が放浪をやめたのと、前年のできごとはまったく無関係なのだろうか。わからない。アジア大会クロージングの歌には、“つぎは広島で会いましょう”というフレーズが入っていた。あの時代、中国からどれほどのひとが海外に行けたのだろうね。
#8「聖なるイチジクの種」Mohammad Rasoulof/2024/イラン=独=仏/Feb. 15/kino cinema横浜みなとみらい★
深刻かつシリアスな主題なのにエンターテイメント性もしっかり組み込まれた、とても観応えのある作品。2022年のクルド人女性の不審死から起こった反イスラム政府デモを背景に、司法関係の役所に勤める男の家庭崩壊劇。SNSにポストされたものなどリアル動画を取り込み、迫真度を増している。イスラム教が男性と比較して女性の権利を著しく制限しているのを“神の法”で片付けるイスラム政府とそれに抵抗する女性の構図が、男の家庭に父と妻・娘の関係としてじわりと持ち込まれ、デモ参加者を裁く側の父親が、同じ目線で妻と娘たちを裁こうとする狂気が加速度的に高まっていく。カーチェイスあり、ホラーありの後半の展開にクラクラした。逃げる母娘と追う父親の遺跡での息づまる立体鬼ごっこは『ドラゴンへの道』を思い出させた。複雑な感動。監督はイランを脱出したものの、夫婦を演じた元々反政府的な俳優は出国禁止となっているらしい。
#7「ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件」莊文強/2023/香港/Feb. 11/TOHOシネマズ新宿◯
1970年代〜香港返還直前を舞台に、大陸からやってきた梁朝偉が悪の限りを尽くす。佳寧集團の栄枯盛衰という実話ベース。梁朝偉に対峙するのが廉政公署の捜査官・劉德華という『インファナル・アフェア』コンビ。梁朝偉だと観客がこの極悪主人公をとことん憎めないのが本作最大の問題だと思う。株価操作とインサイダー取引の狡さというのは、ほんと許せないのでがんがん取り締まってもらいものだけれど、当時の香港の警察システムはザルだったんだろな。どこまで史実に忠実なのかはわからないが、明らかに怪しいのに摘発できずあそこ(RockyのK.G.F並み)まで大きくなるのは想像の域をはるかに超えている。税金は払っていたんだろうか? あの時代の香港はCGで再現しているのだろう。知っているひとには懐かしく感じられそうだった。脇にも懐かしい顔が何人も見られたが、なかでもびっくりしたのは袁詠儀。いつ以来だったろう。
#6「映画を愛する君へ」アルノー・デプレシャン/2024/仏/Feb. 1/ヒューマントラストシネマ渋谷◯
デプレシャン監督のこころに残る作品を引用しながら、ストーリー仕立てで自分の辿ってきた映画人生を追想する、普段の同監督作品からは性質が異なるものの、雰囲気はいつものデプレシャン映画。マチュー・アマルリックも出てくるしね。ときどき本人も登場する。映画人が、“映画大好き、映画が人生だ”と訴えるの、静かに流行っている気がするな。演劇、映画、テレビそれぞれにおける、メディアと観客の立場の違いはわかりやすい。演劇は観客の役割が重いしテレビは落ち着かない。やはり映画が一番だ。現実をスクリーンに投影したとき何が起きるか。観客ひとりひとりの2時間に、凝縮された別世界の経験がはめ込まれるのである。あいにく、まもなく忘れてしまうのだけどね。シネ・ヌーヴォが写ったり、日本の童謡合唱が聞こえたり(小津?)、『侠女』が引用されたり、盛りだくさんで、お腹いっぱいになった。監督は一体何本の映画を観てるんだろう。
#5「Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり」王禮霖/2023/マレーシア/Feb. 1/ヒューマントラストシネマ有楽町★
李心潔がSNSで宣伝してた、彼女のプロデュースものがついに日本に来た。KLのPuduに住む吳慷仁と陳澤耀の身分証を持たない兄弟が社会で這いあがろうともがく悲劇で、手話も含め、マレー語、北京語、広東語、英語(タミル語はなかった気がする)が飛び交う多言語作品だが、沈黙が最も強い印象を残す。驚きの展開、何かしらほっとさせるエンディング。ヤスミンがいないマレーシア映画界も期待できるぞ。いわゆるBL映画ではないが、『ブエノスアイレス』への笑っちゃうくらいのオマージュがある。滝の走馬灯の向こうでふたりが踊るシーン(流れるのは鄧麗君ではない歌手の唄う『千言萬語』)と、陳澤耀が吳慷仁の肩で眠るバスのシーン。片山凉太の音楽はよかったな。ふたりを助けようとするNGO職員の林宣妤と、吳慷仁と心を通わせるミャンマー娘の周雪婷、どちらも可愛かった。吳慷仁はパパノエルのシェフ、陳澤耀は坂口京子に見えてしかたなかった。
#4「満ち足りた家族」ホ・ジノ/2024/韓国/Jan. 25/kino cinema横浜みなとみらい◯
久しぶりのホ・ジノ。何してたのかな? 期待して観に行った。行き着いた先はこれか。題材は興味深い、人間の本質を突くもの。デキは最近の韓国映画そのもので、単純に面白かった。監督の名前を見なければよかったかも。高価なマセラティを事故らせるなんて、らしくない。ソル・ギョング、チャン・ドンゴン兄弟の立場の逆転は予想できるものだし、彼らの、事件を起こすZ世代の息子、娘の不気味さ、冷血さも目新しいものではない。是枝版が観たいな。兄弟のくるまの格差には笑った。勤務医だってそれなりに高収入だろうに、弁護士との差があんなにあるとは。邦題に異議あり。『満ち足りた』なんて、冒頭から明らかに違うじゃん。原題や英題の『普通の』からこれを導くセンスがわからない。いろいろ文句になってしまったが、繰り返す。映画としては面白かった。キム・ヒエとクローディア・キムという女優もそれぞれ美しく&熱演だったしね。
#3「チェンナイの夜」Lokesh Kanagaraj/2017/インド/Jan. 19/キネカ大森◯
インディアンムービーウィークの1本。待望の字幕、しかも日本語字幕付での『Maanagaram』鑑賞である。結果としては大満足で、前回は言葉がわからない故の誤解がいくつもあったことも明らかになった。SriがTrichyからChennaiにやってきた理由もRegina Cassandraが彼を入社させようとする理由も、Sundeep Kishanを入れた三角関係にならない理由もわかった。やはりシナリオがいい。Rowdy志望のRamdossがさらう対象を間違えるある意味紋切りの間抜けな誘拐事件を軸に、Sundeep Kishanと、Sriと、同じくChennaiに出てきてキャブドライバーになったばかりのCharleと、息子を誘拐された大ボスMadhusudhanがさまざまなすれ違いに振り回されていく。どのスレッドも結末を見せないのがニクい。一番かっこいいのはMadhusudhanだな。愛車はTATA傘下のJaguarだった。誘拐された息子は、なぜEgg biryaniよりCurd riceがよかったのだろうか。Egg biryaniおくれ。
#2「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」鄭保瑞/2024/香港/Jan. 18/新宿バルト9◯
往年の香港巧夫電影と黒社会ものを合体させた、なんとも懐かしい香りのする作品。舞台は油麻地の果物市場と九龍城砦。(香港初訪問が1995年でまだ啟德機場ではあったものの九龍城砦に踏み込む機会はなかったのだが、敢えて、)セットのリアリティがすばらしい。ネオン華やかな彌敦道の光景にも感激した。ここで、古天樂、任賢齊、洪金寶、郭富城といった懐かしいメンツが壮絶なアクションを繰り広げる。動作指導は流石の谷垣健治。物語の中心は林峯、劉俊謙、胡子彤、張文傑の次世代4人組が、洪金寶の手下で九龍城砦を牛耳った極悪の気功使いを倒す。最後まで楽しめた。劇場もバラエティ豊かに満席で、みんなこういう映画を待っていたと思われた。香港で大ヒットしたのも、再現された80年代の街の姿も併せ、頷ける。洪金寶はまだまだ現役だね。古天樂がマツケンにしか見えなかったのが個人的には笑えた。え、続篇『九龍城寨之龍頭』があるの?
#1「5 No. Swapnomoy Lane」Manasi Sinha/2024/インド/Jan. 3/Basushree Cinema (コルカタ)◯
せっかくコルカタに来たのでベンガル語作品、というわけではなく、Basushree Cinemaに入ってみたいという理由での選択なので、映画には期待していなかった。が、意外にも英語字幕付だったのでちゃんと観た。残念ながらやはり映画としては面白みにかけるものの、古きよきコルカタを残したいという意図は伝わってきた。Calcuttaと呼ばれた首都時代の建築物はどれも壮大で渋い。それらがどんどん建て替えられている状況は経済発展の必然の過程ではあるが、経済発展がひと段落したときに後悔しないよう、いまから手を打ってもらいたいものだ。家長の死去に伴い手放した古い家をノスタルジーから買い戻そうと若い世代が奮闘するこの作品の形式はほのぼのファミリードラマであるが、主役はそのファミリーに加えその住居そのもので、コルカタ住民には訴えるものがあると思えた。客席はまばらだったけどね。Basushree Cinemaは期待以上の素晴らしさだった。日本にもBookMyShowが欲しい。

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Updated: 4/22/2025

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