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2006年に観た映画の一覧です

今年の目標: 忙しくても映画祭になんとか行くぞ
総括: 映画祭には何とか行きましたが、総数は散々。

Best10です。(旧作は含んでいません。ただし日本初公開作は新作扱い)

  1. #46「ワイルドサイドを歩け」韓傑/2006/中国
  2. #19「キングス&クイーン」アルノー・デプレシャン/2004/仏
  3. #37「イザベラ」彭浩翔/2006/香港
  4. #40「三峡好人」賈樟柯/2006/中国
  5. #36「浜辺の女」ホン・サンス/2006/韓国
  6. #32「水没の前に」李一凡,鄢雨/2004/中国
  7. #7「SPL 狼よ静かに死ね」葉偉信/2005/香港
  8. #12「緑茶」張元/2002/中国
  9. #14「ブロークン・フラワーズ」ジム・ジャームッシュ/2005/米
  10. #16「かもめ食堂」荻上直子/2006/かもめ商会

星の見方(以前観たものには付いてません)
★★…生きててよかった。
★…なかなかやるじゃん。
無印…ま、こんなもんでしょう。
▽…お金を返してください。
凡例
#通し番号「邦題」監督/製作年/製作国/鑑賞日/会場[星]

#49「007/カジノ・ロワイヤル」マーティン・キャンベル/2006/英=チェコ=独=米/Dec. 9/109シネマズMM横浜Theater 1
007シリーズを劇場で観た記憶はあまりないが、ショーン・コネリーとロジャー・ムーアのはほぼ全作TVで観ているし、『007は二度死ぬ』など何作かはDVDも持っていて、結構好きなシリーズだ。本作は007誕生の物語とかで、バカラックの音楽がごきげんな同名作のリメイクではない。ある動機があって今回劇場に出向いた。冷戦終結で、対テロリストに変わったテーマには白けた。お色気や秘密兵器もない。にもかかわらず、よくできた脚本で結構楽しめた。でも、Sony Pictures作品には、もううんざり。ソニエリ・ケータイ、Cyber-shot、PCはもちろんVAIOで、監視カメラ映像の記録になんとBlu-rayレコーダ。いい加減にしてほしい。こんなことやってると、ますますソニーファンは減りまっせ。
公式サイト
#48「黒眼圏」蔡明亮/2006/台湾=仏=オーストリア/Nov. 26/有楽町朝日ホール(FILMeX)
“こくがんけん”にしろ“くろめけん”にしろ意味不明の題名だ。邦題はちゃんと付けよう。舞台はKL。華人の女(=陳湘琪)とマレイ人(?)の男が、共に李康生を求める話。李康生は実は2人いて、看病/介護が必要で、それを施すマレイ人/陳湘琪に対し何の反応もない。ここがミソである。李康生1⇔陳湘琪⇔李康生2⇔マレイ人の淋しいコミュニケーションを楽しもう。さて、今回の災いは、インドネシア山火事による煙霧。市民が妙なマスクをする姿には笑えず。やややりすぎじゃないかな。華人の2人はもちろん何も喋らない。2人はちゃんとスプーンを右、フォークを左に持ち、経済飯を食べていた。指導を受けたのだろうか? 来日しなかった監督の代わりに陳湘琪がQ&Aに登場。女優って感じのオーラを放っていた。
#47「激動の昭和史 沖縄決戦」岡本喜八/1971/東宝/Nov. 25/フィルムセンター(FILMeX)
FILMeX岡本喜八特集中の一本で、超豪華出演陣による重い作品。太平洋戦争における沖縄戦の悲惨さを描く。いくらでもお涙頂戴にできる題材を、抑えた演出でまとめてある(ただし長尺)。大本営に見捨てられ、人口の1/3に達する一般市民が戦死。ただの戦争スペクタクルとしては成立し得ないこのような作品に自ら足を運ぶ人って、何を期待しているんだろう? そこが謎だ。公開当時はヒットしたんだろうか? たくさんの、特に防衛省昇格なんかに賛成するような人に観て欲しいのだが、そんな人に限って敬遠するよね。(『男たちの大和』には行くかもしれないが。)ジレンマだ。小林桂樹の超真面目演技が意外だった一方、タンバはやはりタンバだった。三井弘次、藤原釜足の老いた姿が見られる。
#46「ワイルドサイドを歩け」韓傑/2006/中国/Nov. 25/有楽町朝日ホール(FILMeX)★
モノクロ+トランペット(だと思った)のオープニングがかっこいい。『東京流れ者』みたい。プロデューサー、賈樟柯。舞台は炭鉱の町。監督名が出た後、画面がカラーになっても、くすんだ彩度の低い背景にたくさんの女の子が着るピンク色の服だけが映えている。手持ちキャメラのゆらぎと賈樟柯ゆずりのひいたポジションが、若くして人生の行き場をなくしつつあるニート青年の姿を効果的に捉えていると思う。若者の無軌道を描いた映画には教育的効果ははっきり言ってないので、その存在価値は芸術性にしかない。無数に存在するこの手の映画中で、本作はかなりの水準にある。長編第一作ということで、今後も楽しみな監督の誕生だ。ところで、個人経営の炭坑って違法なのかな?
#45「天国に行くにはまず死すべし」ジャムシェド・ウスモノフ/2006/タジキスタン=仏=独=スイス/Nov. 23/有楽町朝日ホール(FILMeX)
題名との関連がうまく説明できないのだけど、男が理想の女に出会う話。主人公の男は前半、ストーカー状態。街でちょいと気になる女性がいるとすぐに追いかけていく。展開上、タジキスタンの女性がたくさん出てくる。スラブっぽい人よりアラブっぽい人が多いようだ。そのうち、特に気に入ったらしいヴェラという女性をまちぶせ。夕暮れの、街角♪ 喫茶店は出てこなかったな。後半はヴェラの旦那に拉致されて犯罪の片棒かつぎ。最後は殺人まで犯すが、ヴェラとはうまくいく。ヴェラが『動くな、死ね、甦れ!』の女の子が大人になった姿とはQ&Aで聞くまでわからなかった。彼女以外の出演者はみな素人とのこと。売春婦はプロかな? ゲストがいたにもかかわらず、上映後、拍手が起こらなかったのはかわいそう。《グランプリ受賞》
#44「アザー・ハーフ」応亮/2006/中国/Nov. 22/有楽町朝日ホール(FILMeX)
90 minutes film studioという素晴らしい名前のプロダクションのくせに上映時間は2時間近いし、ビデオ撮影なのは納得できない。章子怡似(?)で喘息もちの女と大酒飲みのチンピラギャンブラーの男のどうしようもない関係と、離婚調停が得意らしい弁護士事務所を訪れる客が語る身の上話が共鳴し、男と女ってなんだかなーという雰囲気を漂わせながら、結末の世紀末感に向かうのはなかなかよかったけれど。キャメラは面談のときだけ弁護士の視線。人物が観客に向って語りかけるのも、進歩性はないとはいえ悪くない。監督はまだ若いんだし、これからなんだし、今後に期待だ。ところで今年はagnes b. Awardへの投票を基本的に棄権することにした。ただの遊びとはいえ、あのしくみで賞が公正に選ばれるわけがない。《審査員特別賞受賞》
#43「エレクション2」杜琪峰/2006/香港/Nov. 20/有楽町朝日ホール(FILMeX)
パート2は配給が付いていないらしい。観てみて納得。あんなシーンがあるんでは普通の配給会社はひいてしまうだろう。パート1から2年たった次期会長選挙。今回対決するのは古天樂と任達華だ。もはや古天樂は怪しい柔道家には見えず、中条きよし似の冷酷ビジネスやくざでしかない。(三味線の弦は操らないが。)えげつない争いの末、和連勝会は新しい会長を迎える。しかし、勝利した彼を待つのは大陸の政治権力組織で、映画はやくざの虚しさを訴えて…。こんな展開、何か変だ。そんな弱気なことが言いたいのか、プロデューサーの向華強さん? でも、古天樂の雇った殺し屋は楽しかったよ。そうそう、ぶっぱなさないけど、拳銃出てきた。
#42「ウィンター・ソング」陳可辛/2005/香港/Nov. 19/有楽町スバル座
パンダゴロの陰謀でいつの間にか観に行くことになっていた。周迅主演なのでまあいいかと思いスバル座へハシゴ。馬場医院には行ったことないなあ。別に行きたくないけど。香港映画を連続して観るのは久しぶりだ。陳可辛作品というのでいや〜な予感がしたのだが、これが的中。4階層の、不必要に複雑な構造をもった凡作である。張學友のリサイタルを見た気分だ。周迅も唄うけどね。金城武、髪が薄くなってきたな。北京が舞台の映画では紋切りの、開発前後の街の対比がありきたりだ。サーカスの空中ブランコで落下するのも。もしかして、わざとベタベタを狙っているのか? 『ALWAYS 三丁目の夕日』か? まあいいや、周迅観たから。今度は本物が見たいね。
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#41「エレクション」杜琪峰/2005/香港/Nov. 19/有楽町朝日ホール(FILMeX)
今回のフィルメックスで最もチケットが取りにくいと予想した作品で、席は後ろから2列目。字幕がよく見えないじゃないか。洪門会組織の、任達華と梁家輝による会長争いを描く。どちらもヒーローではなく、汚い手段を使いながら、会長の証“龍頭棍”を奪い合う。任達華が小林旭で梁家輝が千葉真一といったところか。特に梁家輝のぶっ飛び度はなかなか見ごたえあるよ。黒社会ものに拳銃が一度も出てこないのは、逆に本物っぽくないと思うぞ。古天樂が出てきたら柔道龍虎房を思い出して、柔道をしないことが不思議に見えた。それにしても杜琪峰はどんどん妙な道を歩んでいるような…。
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#40「三峡好人」賈樟柯/2006/中国/Nov. 17/東京国際フォーラム ホールC(FILMeX)
FILMeXのオープニングは、大期待の賈樟柯。ヴェネチアで金色のライオンを獲った新作である。まず驚いたのは画面の質感が映画っぽくなく、テレビ・ドキュメンタリーのように感じたこと。南だからか自然光がいっぱいで、色彩豊かで陰影も濃い。同じ奉節が舞台(?)の『水没の前に』ではそんなことは思わなかったので、これはHDキャメラのなせる技なのだろう。次に驚いたのは、同作で旅社を経営していた何さんがこちらでも旅社の主人だったこと。ご丁寧にも、元の場所を追われ、新しく旅社を開いたのは、やはり橋の下であった。三度驚いたのは“華”の形をした展望台(監督は“モニュメント”と言っていた)。なんじゃありゃ? と驚きの連続だったが、作品にはもちろん大満足だ。これでFILMeXの半分は終わったようなものだ。
#39「桃花泣血記」卜萬蒼/1931/中国/Nov. 11/フィルムセンター
身分差ゆえに男女が結ばれない、永遠の紋切り型悲劇。こういうものは何か特別な理由がなければ観に行かないよね。阮玲玉主演。理由はこれだ。別にファンというわけでもないけれど、この時代の大スタア女優だからして自ずと注目だ。“田舎娘は化粧の美しさではない”というような字幕が出たそばから、明らかに厚化粧の阮玲玉(田舎娘役)が映るのには笑ってしまった。1931年といえば満州事変勃発の年。娯楽映画を普通に製作する時代の終わり。本作にはまだ“抗日”のかけらもない。英題は『Peach Girl』だが、台湾ドラマとはまったく関係ないようだ(あれは『蜜桃女孩』)。そうそう、曹雪晶さんによる二胡の伴奏がついていました。あの音色はいいね。せっかくの伴奏付なのに、雨だからか観客が少なくて残念でした。
#38「My Mother is a Belly Dancer(原題)」李公樂/2006/香港/Oct. 29/シアターコクーン(TIFF)
もう映画祭のおしまいである。4作品でも観られただけ幸運と思うことにしよう。さて、これも香港映画。彩虹の団地に住むごく普通の専業主婦を中心に、それぞれに悩みをもつ女性4人がベリーダンスで心を通わせ、自立していく物語。フルーツ屋おばさんは楊貴媚の目を細くしたような感じ。ゴミおばさんは小林聡美みたい。なぜベリーダンスなのか、監督の説明を聞いてもよくわからないけれど、セクシーとは対極にいるおばさん達でも、ダンスが上手くなるにつれて、それなりに見えてくるのが不思議である。Q&Aでも話題になったカタルシスの欠如は、僕好みの傑作の必要条件だが、本作のテーマに限定すれば、あってもよかったかな、という気はする。『リンダリンダリンダ』みたくね。
#37「イザベラ」彭浩翔/2006/香港/Oct. 28/シアターコクーン(TIFF)
そりゃまずい、なーんだ、いい感じ、最後は悲劇か、え、そうなの?、えらい、うまくいくといいね、というあらすじ。巧い脚本である。Q&Aで監督が解説したように、娘=マカオ&父=中国&娘の父への回帰という構造をとっており、深読みすれば、中国の更生を求めている作品ということになる。父娘が心を寄せ合うにつれ形成される映像的な相似形が小津的、と誰もが思うだろう。中平康ライクなところも垣間みせ、実際、監督と日本映画の関係が気になるところである。舞台のマカオは、ギア要塞の灯台が出てくるのが明らかなくらいで、あとは訪れた者だけが知るマカオ臭い街中。黄秋生の三度の登場シーンで場内爆笑。Q&Aでは愚問が多かった。映画を観るなら、各シーンの意味をもっと自分で考えなよ。
#36「浜辺の女」ホン・サンス/2006/韓国/Oct. 22/オーチャードホール(TIFF)
韓国映画ではホ・ジノと同じくらいお気に入りになったホン・サンス最新作。なんとオーチャードホールでの大規模上映である。この監督でこの劇場がいっぱいになるとは思えないが…。ちゃんと確認してないけども、やはり満席ではなかった。そんなことはどうでもいい。映画を観ましょう。わざと素人っぽいズームアップを多用し、海辺のスナップ風にした作風は、相変わらず軽くてぐずぐずする男に似合っていて、十分楽しんだ。今回も食事シーンがいい。相手の女性ふたりはいまひとつ魅力に欠けたが、これを例えばイ・ヨンエさまなどにしてはだめだ。あくまで普通であることがホン・サンス映画にとっては重要である。犬の散歩をするふたり、ウォーキングするふたりの登場のしかたが、オヅというよりタチ風で笑ってしまった。
#35「青春期」唐大年/2006/中国/Oct. 22/TOHOシネマズ六本木ヒルズArtスクリーン(TIFF)
今年の東京国際映画祭にはほとんど行けない。その上、昨日は急用ができてせっかく買ったチケットをむだにしている。というわけで、本作は貴重な第一回。北京を舞台にした楊徳昌風群像劇。友だち同士の女の子とそれぞれのカップルを中心に、いわゆる“オトナになっていく”物語である。小野リサをBGMに使っているところはよしとしても、妙な夢シーンを挟んだりして、質は楊徳昌よりも数段落ちる。工事現場で働く青年が七七のアパートを『裏窓』のごとく観察しているのがおもしろいが、人恋しさに知らないひとに電話をかけるこんな青年いまいないだろう。と思うが、中国にはいるんかな? 主演の田原は普通に可愛いと思うのだが、意外に七七役の浦蒲も魅力的だったよ。
#34「フラワーズ・オブ・シャンハイ」侯孝賢/1998/日本=台湾/Oct. 14/シネマヴェーラ渋谷
公開時に観たものより9分だか長いという、カンヌ映画祭出品版。レアだからか、劇場はなんと満席。当時もこれくらい入ればねえ。本作はいわゆるシネフィルには好評だそうだ。レナート・ベルタのごとく、じゃんけんゲームに興じる閑人たちをゆっくりと追い続ける李屏賓のキャメラは確かにいい。が、やはり何か僕はひっかかる。うまく表現できないけど。侯孝賢は満足しているのだろうか? そのリターン・マッチが『スリー・タイムズ(百年恋歌)』ではないのか? 上映後、プロデューサー市山尚三、出演者羽田美智子、映画評論家宇田川幸洋によるトークショウ。セットは田んぼのど真ん中に作られたと言っていた。耳を澄ませているとカエルか虫が鳴いているような音が聞こえて妙だと思っていたけど、謎が解けた。
#33「不壊の白珠」清水宏/1929/松竹蒲田/Sep. 24/フィルムセンター
初期(といってもすでに50本以上撮っているが)のシミズにはよくあるメロドラマ(菊池寛原作)で、話自体はたわいもない。専務が会社(丸ビルにある)に出てこず何日も勝手に別荘にこもったり、車内で秘書に言い寄ったり、現代では考えられないな。興味深かったのはクローズアップ。シミズといえばやはり“ロングで移動”なわけで、これはなかなか新鮮。人物が異様にカメラに近づくことがたびたびで、妙に素人っぽかった。今回は水谷浩という美術監督の特集であるから、そちらにも目を向けなくてはならない。例えば、八雲恵美子と高田稔が待ち合わせる喫茶店。半地下なのか、彼らの目の高さに窓があり、道行く人びとのシルエットが映る洒落た設計だったね。クレジットにはなかったけど、大山健二の出演を確認。
#32「水没の前に」李一凡,鄢雨/2004/中国/Sep. 16/ポレポレ東中野
賈樟柯、ヴェネチア映画祭金獅子賞おめでとう。公開、期待してますよ。その作品もそうらしいが、本作も三峡ダム建設で消滅する街が舞台、というか主人公。山形で昨年度グランプリを獲ったドキュメンタリー作品。街が次第に死んでいく様子が活き活きと(矛盾?)記録されている秀逸なフィルムである。自分が住んでいる街が川底に沈むなんて、想像できるだろうか。ダムという怪獣が(すみません、まだグエムルの記憶が…)、静かに予告通りやって来て、逃げ惑う人、開き直り居座る人、ここぞとばかり儲けようとする人。ぎりぎりの状況下で、人間は本性をむき出しにする。沈んだ街から出ていった人びとは現在どうしているのか。おそらくは、何もなかったように以前と同じ生活に戻っているだろう。政府の作ったアパート群で。
#31「」キム・ギドク/2005/韓国/Sep. 16/ル・シネマ1
僕は監督キム・ギドクには反感をもっている。虫が好かないとでもいうのか。にもかかわらず毎度観に行ってしまうのは、人間の本質をおとぎ話でえぐってみせる手腕に敬服しているからかもしれない。映画としては気に入らないが、今回も僕に大きな衝撃を与えたことは認めよう。再度引き合いに出すなら、蔡明亮が人間の淋しさにフォーカスし続けているのに対し、キム・ギドクは人間の暴力性(と欲望)に注目している。主人公がスクリーンの前では常に無口であることで、それがビジュアルに強化されるのだ。ところで、李康宜にちょい似のハン・ヨルム。色気では段違いである。これは、台湾と韓国という国レベルに汎化し比較しても同じことが言える気がするな。とにかく彼女は将来、大物女優になること間違いなし。
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#30「闘牛に賭ける男」舛田利雄/1960/日活/Sep. 9/フィルムセンター
二谷英明、別名ダンプ・ガイ。彼の典型的役柄が観られる作品。すなわち、恋人もしくは婚約者を裕次郎に奪われる(というか、女性が勝手になびく)可哀想な役回りである。その傾向はムード・アクションに顕著で、本作はそのはしりといったところ。1960年といえば無国籍アクション全開の頃だが、裕次郎は芦川いづみなどのアイドルを相手に青春〜サラリーマンものを連発していた。これもサラリーマンものの端くれといえなくもない。海外ロケのさきがけらしいが、なかなか豪勢である。庶民が海外旅行など行けない時代だから、そのインパクトたるや想像を絶する。でも、僕ぁ『アラブの嵐』の方が好きだね。清純で。(もちろん、いづみさまが。)上映後に監督のトークあり。いまや普通のじいさんだ。
#29「グエムル 漢江<ハンガン>の怪物」ポン・ジュノ/2006/韓国/Sep. 9/有楽町スバル座
(それを明示するものはどこにも示されないが)大量のホルムアルデヒドによる影響で生まれたらしい、『ポゼッション』でイザベル・アジャーニが創り出した怪物のような気持ち悪い生き物(あれよりだいぶ巨大)がSFXでソウルを暴れ回る。こまかいギャグはおいておいて、全体としては合衆国への痛烈な批判とこれに対して何もできない韓国政府への軽蔑のようなものが通底していて、大いに笑える喜劇である。これ、シチュエーションがぴったりハマる日本でぜひリメイクしたい。『殺人の追憶』のソン・ガンホやパク・ヘイル、『ほえる犬は噛まない』のペ・ドゥナやピョン・ヒボンなどおなじみの俳優が出ており、どうやらポン・ジュノ組を作りつつあるらしい。さて、日本版では誰を起用しようかなあ。
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#28「Dear Pyongyang」梁英姫/2005/チェオン/Sep. 2/渋谷シネ・ラ・セット
“帰国”させた息子3人に万景峰号で会いに行く、朝鮮総聯元幹部のアボジとオモニを、そんな両親を理解できない娘がベータカムでしつこく追うドキュメンタリー。平壌を観るのは『金日成のパレード』以来か? 舗道のブロックのデコボコ・剥がれなどはアメリカでも普通に見られるのに、これが北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国(死語?)だと“やっぱりね”と思ってしまうのは、我ながら少々情けない。でも、パーティーに出ている料理が国民誰もが食べられるものじゃないことは間違いないだろう。この両親は息子家族にばんばん荷物を送っているが、輸出管理はどうなっているのかな? 孫にラジコンヘリくらい送るかもしれんぞ。後半、アボジは病の床につく。仕送りが途絶えると平壌の息子家族の暮らしはどうなるのか心配である。
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#27「ゆれる」西川美和/2006/『…』製作委員会/Sep. 2/シネ・アミューズWEST
死んだ真木よう子の母親がオダギリ・ジョーに尋ねるときに使った“殺されるような子”という言葉が気になった。TVニュースで誰かが殺されたことが伝えられ、被害者を知る人物が“あいさつもちゃんとする明るい子でした”などとインタビューに答える。そんなばかばかしい報道を見ながら、誰もが“殺されるにはそれなりの理由があっただろう”と思ったりしないだろうか? 母親の言葉はこの社会の危険な偏見を代表している。映画は、兄弟を対置して見せるそのポジションをいつの間にか逆転させるシナリオが巧い。エンディングの捉え方は人それぞれだろうが、香川照之が帰り兄弟の信頼関係が戻ってくると僕は思いたい。検事がよかったな。あんなのの被告になりたくないけど。
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#26「太陽」アレクサンドル・ソクーロフ/2005/ロシア=伊=仏=スイス/Aug. 26/銀座シネパトス2
昭和天皇を主人公とした前代未聞の作品。敗戦時の昭和天皇について語るのは国内ではチャレンジングだものね。イッセイ尾形の演技(モノマネ?)は、僕が知っている、老人になってからのその人によく似ていた。44歳の天皇が、あの表情と喋り方をするのは妙な感じである。(でも、高校時代に内輪で流行った、手を前後に振る独特の仕種は見ることができなかった。)導入部の重苦しさ、東京大空襲の悪夢から一転し、マッカーサーに会ってからはコメディタッチ。天皇がボギーのブロマイドを持っていたとは知らなかった。ソクーロフの昭和天皇への眼差しは優しい。僕は、天皇に生まれた悲運には同情するけれど、ね。シネパトスでの上映は勘弁して欲しかったな。地下鉄がうるさいし、いささか臭い。
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#25「蟻の兵隊」池谷薫/2005/『…』製作委員会/Aug. 5/シアター・イメージフォーラム
日中戦争で中国に行かされた上、敗戦時には上官命令で残留、国民党軍として中国内戦を戦わされた男が、1954年、奇蹟ともいえる帰国後、年老いたいまも国の責任を問うて裁判を執念で戦う壮絶なドキュメンタリー。初年兵当時に“教育”として人殺しを強要された経験を語る姿は、多少の慣れを感じさせるところも含め、震えがするほど恐ろしい。戦争の現場を知るこのような人が壊滅しつつある現在、この国は変な方向にどんどん突き進んでいる。世の中、国益が至上なんてことはあり得ないぞ。老いた男は、靖国神社で演説した小野田寛郎に“戦争美化ですか?”と問いかける。これに噛みつくように返す小野田氏も恐いが、その付き人みたいなおばさんがもっと恐かった。
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#24「萬世流芳」卜萬蒼,朱石麟,馬徐維邦,張善琨,楊小仲/1942/中華聯合製片公司=中華電影=満映/Jul. 23/フィルムセンター
黄河の濁流に飲み込まれる李香蘭。これが、これまで“萬世流芳”という言葉から連想するイメージだった。幻の、李香蘭が漢奸でない珍しいフィルムである。満席で観られなかった悪夢からちょうど一年。前述のイメージはとうとう消え失せた。林則徐を讚え、英国を非難し、中国の自決を促す作品で、日本の侵略に対するスタンスが微妙というか絶妙。李香蘭は、アヘン中毒の男と結婚してから俄然色っぽくなるのだが、彼女よりも、林則徐の奥さんになる袁美雲がよかった。中国のミッチーって感じ。ほかに観られる作品がないかしらん。で、李香蘭夫婦はどうなったのだ? 死んだのか? そうそう、田中春男がアヘン中毒で家を潰すろくでなし役(≠李香蘭の旦那)で登場。中国でも活躍してたんだな。(もちろん、単なるそっくりさん)
#23「秋立ちぬ」成瀬巳喜男/1960/東宝/Jul. 16/ラピュタ阿佐ヶ谷
“銀幕の東京”なる、まことに魅力的な特集を組んでいるが、なかなか来られず。実に4ヶ月ぶりのラピュタである。おかげで会員更新の時期を逃し、これまで貯めたスタンプはリセット。本作はナルセ作品なれど未見だったもの。眼差しが池部良に似ている男の子・秀男を軸に、大人の世界の不条理さ(といってもそれを糾弾するわけではないのがナルセだが)を描いていく佳作ずら。少しずつ出てくる大物助演陣がいい味出していて素晴らしいじゃん。肝腎の東京は、橋のたくさん残る銀座を堪能できる。昔は松坂屋の屋上から海が見えたんだ。(いまも見えるの?) 藤間紫の娘・順子と秀男が“旅”する晴海〜東雲の荒涼とした風景も東京。順子が“いまにこの辺もビルばかりになる”と言う。確かにそうなったが、変わらず荒涼としているよな。
#22「タイヨウのうた」小泉徳宏/2006/『…』フィルムパートナーズ/Jul. 16/東劇
袁詠儀の『新不了情』のリメイク、と聞いていたが、“インスパイアされた”くらいが適切な表現のようだ。いわゆる(XPがどうか知らないが)不治の病もの、お涙頂戴映画である。兼、鎌倉映画。七里ヶ浜駅周辺から始まり、鎌倉駅、小町通りがここまで露骨に出てくると、少々げんなりしてくる。歌手が主役の映画って流行ってるの?予告篇では大塚愛が出てきたし、少し前には一青窈もあったじゃない。アキラじゃないんだから、映画にはちゃんとした役者を使って欲しい。そんなこんなで映画としての出来も、鎌倉映画としての価値も疑問だ。そうそう、主人公YUIの両親・岸谷五朗と麻木久仁子が経営するトラットリアは小坪のピッコロヴァーゾ。よく撮れてるじゃないですか。
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#21「ジャンプ!ボーイズ」林育賢/2004/台湾/Jul. 16/シネスイッチ銀座1
僕の書く文章では、いわゆる“びっくりマーク”の使用は御法度であるが、映画タイトルのように固有名詞の場合は致し方ない。ないが悔しい。これは宜蘭の公正小学・ちびっこ体操チームの練習風景を負うドキュメンタリー。すご腕の、寺島進似のコーチがいて、チームはジュニア大会で優勝する実力をもっているのだ。顔やふだんの行動はコドモなのに、体操では一所懸命。観ていて確かに楽しい。でも、自分の意思がまだ弱く、遊び盛り、食べ盛りの年ごろの子供を訓練することは大博奕。ひとの人生を利用した大きな実験なんである。大人の責任は重いぞ。ところでこの作品を撮っているのは、コーチの弟。元ひっつき虫だったらしい弟が、ふたたびひっつき虫になったというわけだ。兄ちゃんってそんなに憧れる存在かね?
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#20「胡同のひまわり」張楊/2005/中国/Jul. 9/ル・シネマ1
これも『ジャスミンの花開く』と同じ紋切り構造の作品。『こころの湯』のときにも感じたが、この監督は大衆ウケするネタを選んでお涙頂戴映画を撮っている。第六世代の看板が泣いている。中身は、男が文革で画家としての人生をだいなしにされたのち、父親としてもダメ人生を送るというものだ。行動が意図不明のうえ、終盤の種明かし(?)もまったく納得いかない。ラストシーンがくさい。男の奥さんは、最近よく見るな、陳冲。彼女は鞏俐より全然いい。おばさん役がはまっているが、本人がおばさんなんだから当たり前か。今度北京に行ったら(観光向け以外の)四合院はもうないのだろうか?淋しいことだ。クレジットによれば、撮影に杜可風がかんでいたようだね。ふーん。
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#19「キングス&クイーン」アルノー・デプレシャン/2004/仏/Jun. 25/シアター・イメージフォーラム★
長尺でも僕が許せる数少ない監督、デプレシャンの新作(といっても2年前の作だが…)、待望の一般公開。うぉおおおお、のっけからこのカッティング、このキャメラワーク。音楽は、あの『Moon river』。そして、末期癌で死んでいく父親・ルイの、娘への強烈なメッセージ。驚愕。かっこよすぎ。主人公エマニュエル・ドゥヴォスの、善人だか悪人だか不明の、実に人間的なキャラクター造型にも拍手を送りたい。彼女の、カエルみたいな顔とだらしない唇は、あいかわらず好きにはなれないけれどね。マチュー・アマルリックは少し歳取ったね。それにしても、みんなよく喋るなあ。フランス人というのは、アメリカ人や関西人と同じく、“born to talk”な人種らしい。(抗議のメールは受け付けません。)
公式サイト
#18「ジャスミンの花開く」侯咏/2004/中国/Jun. 25/シネスイッチ銀座1
日帝侵攻〜文化大革命〜改革開放、それぞれの時代を対照的に追っていくのは、いまや中国映画の紋切りパターンと言ってよかろう。章子怡と陳冲が、この三時代で、娘1と母1、娘2と母2(=娘1)、孫娘と祖母(=母2)をそれぞれ演じる、おもしろいといえばそうだし、気恥ずかしいといえば言えなくもない設定。孫娘は養子のくせにやはり章子怡なのはおかしいではないか、というありきたりな指摘はともかく、陳冲の貫録には感心した。監督は、キャメラマン出身の性か、いかに見せるかを考えているようだ。第一作だからしかたないが、もう少し控えめな演出を望みたい。そういうことは、エグゼクティヴ・プロデューサーの田壮壮氏がアドバイスしてあげればいいのに、ね。
公式サイト
#17「柔道龍虎房」杜琪峰/2004/香港/May 27/キネカ大森1
大森へ移動する途中の山手線内。目の前に紅林刑事が座っていた。結構安そうな格好に夕刊フジを抱えながら、襟に議員バッジがしっかり光っていた。これから遊説なのだろう、浜松町で降りた。さて、本作、摩訶不思議な映画。香港なのにカンフーでなく、みな柔道で戦う。銃器も刃物も使わない。郭富城から古天樂、安藤昇(似のやくざ)、梁家輝らへと拡がる柔道バカの輪。これがオマージュというものか。そもそも、杜琪峰作品に高捷が出るというので、どんなドンパチがあるのか興味津々だったのだが、高捷は應采兒の父親役でどこから見ても普通のおじさん。娘におかずをよそってやる優しいお父さんであった。やられたね。クラブの3つのテーブルで同時に行われる会話を同時に見せる編集が興味深い。
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#16「かもめ食堂」荻上直子/2006/かもめ商会/May 27/シネスイッチ銀座1
好ましくない理由で暇が突然できた。買っておいた前売券を使うときだ。観てみれば、悪いひとはひとりも出てこない、完全なおとぎ話、癒し系作品であった。人気の理由はこれであろう。日本に増殖中のおしゃれ系カフェ・デリ風の店構えのかもめ食堂。これを開くには短くても1年はヘルシンキに住む必要がある。1年住めば友だちができるはずで、そうすれば、開店ひと月のお店に客ゼロなんてことはありえない。そんなところにも非現実性が如実に現れている。ま、確信犯だろうからいいんだけれど。小林聡美という湿度0%の女優は以前から結構お気に入りだ。旦那を始めとして、今回の共演者のような交友関係が残念な、そういう意味で手の届かない人である。演出はもう少し自然にやってもらいたかったな。
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#15「陽のあたる坂道」田坂具隆/1958/日活/May 20/三百人劇場
いづみさま#35。劇場で観るのは2度目(→初回)。3時間半の長尺なので一生のうち、そう何度も観られるものではない。田園調布駅のほか、絵画館や聖橋などのランドマークが出てくる東京映画だ。ロケーションがはっきりしているのに対し、登場人物の年齢は不詳。芦川いづみは田園調布のブルジョア家庭の娘で脚に少々障碍をもつ高校生(のはず)。兄に小高雄二(医大生)と石原裕次郎(美大生?)。裕次郎の実の母親(山根寿子)の息子である川地民夫(社会的ポジション不明)の恋人一歩手前である。川地民夫は“ハイティーンのホープ”ジャズ・シンガーなので十代のはずだが、キャバレーで酒飲んで聴衆に向かって“僕酔っぱらってます”などと言っている。そんなこと石坂洋次郎なら当たり前さ、ということにしておこう。
#14「ブロークン・フラワーズ」ジム・ジャームッシュ/2005/米/May 20/シャンテ・シネ2
ジャームッシュがアキ・カウリスマキになろうとした作品。主人公の隣人が最高におかしい。主人公に届いた手紙を分析し、その差出人を特定しようと、出不精の主人公をロード・ムーヴィーの主人公へと仕立てていくおせっかいなインターネット・フリーク(ただし腕は???)兼5人の子持ち親父である。本人がエチオピア人なのかその妻がそうなのか定かではなかったが…。彼が主人公を追い立てていく過程が問題のカウリスマキ・タッチ。しかしながら、ジャームッシュはジャームッシュ。カウリスマキにはなれなかったよ。ジュリー・デルピーは完全におばさん、シャロン・ストーンももはや普通のおばさん、ジェシカ・ラングはまああんなものかな。As time goes by♪
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#13「夜よ、こんにちは」マルコ・ベロッキオ/2003/伊/May 13/ユーロスペース1
イタリアの極左組織・赤い旅団が1978年に起こしたアルド・モロ元首相誘拐暗殺事件。人質監禁の任務を負った4名のチームがモロ氏へ“死刑”執行するまでを、チーム内の女性に寄り添い、記録映像を交えながら描く。恥ずかしながら本事件について知識のない僕には、物語がどこまで事実にもとづいているのかわからない。モロ氏の暗殺を陰で望んでいる勢力の存在を示し、単なる極左テロ事件に終わらないドロドロした社会構造を浮かび上がらせる。モロ氏解放を夢想するのを女性に設定した点に監督の女性観を感じる。この夢想とラストシーンの対照が生む映画的インパクトが秀逸である。それにしても久しぶりの映画鑑賞。こんなペースじゃ先が思いやられる。前売り買った『かもめ食堂』も観られそうにないし。
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#12「緑茶」張元/2002/中国/May 13/東京都写真美術館ホール
章子怡、周迅、徐静蕾とともに中国四大名旦のひとり、趙薇。タイプではないが、十分かわいい。趙薇は二役(?)で、一方がお堅い大学院生、片方が奔放な娼婦。大学院生の方は、一見してダサく不細工なのだけれど、よぉ〜く見ると美人だという、少女漫画に古来からある紋切りな設定である。そもそも、美人を“一見してダサく不細工”に見せるというのは、映像的に無理である。やるなら周星馳が『少林サッカー』で彼女に施したように徹底的にやる必要がある。(が、僕はやる必要はないと思う。)姜文のノリが張藝謀の『キープ・クール』に似ているこの映画、結局何も明らかにされないながらもハッピー・エンドを予感させる、うまいシナリオである。監督はヒッチコックファンなのか、相変わらず自ら出演することを忘れないね。
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#11「母の旅路」清水宏/1958/大映東京/Mar. 25/ラピュタ阿佐ヶ谷
小津安二郎につぐ世界最強映画監督は清水宏である。作風は対極にありながら、ふたりは大の親友だったという。みなさん、清水宏を観ましょう。というわけで、本作は以前フィルムセンターで不完全ながら観たことがあるのに、パンダゴロが観たいというので付き合った。(どうやら大山健二をチェックしたかったらしい。)いわゆる“母もの”の一本。戦後製作のお涙頂戴映画だが、それなりに楽しめる。今回目に付いたのは田宮二郎。クレジットにはなかったように思うが、サーカス団員として結構写ってた。サーカス&映画といえば、アキラの『さすらい』だ。空中ブランコで対決させれば面白かったかも。三益愛子の娘役・仁木多鶴子は若尾文子に似てるけど、血の繋がりはないようですね。
#10「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」トミー・リー・ジョーンズ/2005/米=仏/Mar. 18/恵比寿ガーデンシネマ1
予告篇を観て、ハードボイルドっぽくて面白そうだったので、また来てしまった恵比寿ガーデンプレイス。トミー・リー・ジョーンズって監督もやっているのか。結果として、辺境で退屈している妻の浮気相手を殺してしまうストーカー似の国境警備員。業務上過失致死の罪は逃れられないだろうが、このリンチはちょいと酷すぎる気がするな。テキサスからメキシコへ、リオ・グランデを渡る旅は、過酷だが楽しそう。結局、メルキアデスが何者だったのか明らかにはならない。ピートの気が済めばそれでいい、ということか。かっこばかりつけりゃいいってもんじゃないぞ、映画ってのは。メキシカン・ビールTECATEがさりげなく出てきた。こういう風に出さなくちゃね、OPELさん
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#9「うつせみ」キム・ギドク/2004/韓国/Mar. 11/恵比寿ガーデンシネマ2
蔡明亮映画の登場人物のように、キム・ギドク作品の主人公たちも無口だ。留守宅への不法侵入を重ね、洗濯し、故障した器械を修理し、記念の写真を撮る范植偉似の男は、ついにキャメラの前では一言も発しない。孤独な男女は、前半から中盤にかけ役割を交換し親密になっていくが、その女も終盤に“愛してる”と言うだけである。ところで、本作の邦題はめずらしくうまい。原題の『空き家』や英題の『3 Iron』には情緒がないが、『うつせみ』にはそれがある。気配を消す術を次第に会得する男は、本当に現世の存在なのか、魂の抜け殻の幻想か? ラストシーンのヘルスメーターがそれを語っているって? あれは、女が“修理”してああなっただけかもよ…なんてことはないか。
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#8「ブロークバック・マウンテン」李安/2005/米/Mar. 11/シネマライズ
今年のアカデミー賞作品賞最有力といわれながら、結局監督賞にとどまった(それでもめでたいが)李安の新作。すっかりハリウッドの大監督だね。呉宇森は何してるんだろう。20年越しで描かれるカウボーイ同士の恋愛は、少々非現実的な気がするものの落ち着いた演出で、評判を呼ぶのもなるほど無理はない。保守的なアメリカ中部。これがカリフォルニアだったなら、ジャックもあのような死に方はしなかっただろう。ディジタル処理が多少入っているのかもしれないけれど、圧倒的に広い空、険しい山を移動する羊の大群などが素晴らしく美しかった。(もっとも、ロケはカナダのようだ。)シネマライズに来たのは久方ぶり。いつの間にやら全席指定だったけど、シート自体は狭いまま。わしゃ、不満じゃ。
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#7「SPL 狼よ静かに死ね」葉偉信/2005/香港/Mar. 4/新宿オスカー
洪金寶と甄子丹という功夫スター。任達華という刑事物スター。三人集まると“父の日”映画になる。登場人物がみな、父親であるか父親を想うんである。男たちの絆と義理で成り立つ張りつめた世界を、彼らの父性が自己破滅させる壮絶なストーリー。というとよさそうに聞こえるな…。それはさておき。マフィアのボス(これが洪金寶。似合ってる)を有罪にするためなら、殺人まで平気でやってしまう刑事(もちろん任達華)。ほんとに刑事なのか、タンクトップなぞ着て、相変わらずナルシストな甄子丹。暴力が付き物の刑事物にカンフー・アクションを取り入れた構成は、なんだか異様だ。客席も格闘技ファン系の人たち。なんだか異様だ。OPELが協賛していて、覆面パトカーが全部OPELだ。これも異様だ。
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#6「次郎長三国志 第七部 初祝い清水港」マキノ雅弘/1954/東宝/Mar. 4/シネマヴェーラ渋谷
あれれ、いつの間にか清水に帰っているぞ、次郎長一家。本作はうちに録画したのがあるのだけれど未見(そんなDVD-Rは山ほどある)。前作で次郎長をだました恩知らずの元相撲取り・九六に復讐する、忠臣蔵をパロったストーリー。正月映画らしく、出演陣もシリーズのあちこちから集められ、お祝い気分満点。一部は『鴛鴦歌合戦』をちょいと彷彿させる。ちびっこ親分・長門裕之が抱える母親(とその代替としての久慈あさみ)への思慕のパートが観ていて恥ずかしい。マキノ節だね。一度でいいから久慈あさみの唄う主題歌を聴かせろ。ところで、この映画館界隈は、若者が集まるクラブなども何軒かあるし、東急デパートの駅との連絡バス(おじさん、おばさん、子供も乗る)も通る、不思議な雰囲気だ。これぞ東京?
#5「次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家」マキノ雅弘/1953/東宝/Mar. 4/シネマヴェーラ渋谷
マキノの『次郎長三国志シリーズ』をまとめて上映している粋な劇場があるというので行ってきた。道玄坂のラブホテル街にできた、ユーロスペースなども入るRC造りの映画ビルだ。さて、東宝の本シリーズは、この第六部と第七部、第九部をスクリーンで観ていないのだが、本作だけはスカパーにて観賞済。凶状持ちとなった一家が流れていくうち、体の弱ったお蝶(若山セツ子)が死んでしまい、一家は清水へ帰ることを決意する。初登場の越路吹雪が芸達者なところをみせる。小堀明男の次郎長は、相変わらずにやけていて、どこにリーダーシップがあるのかよくわからない。全体として、マキノの舞踊的な演技指導が目に付きすぎる感あり。話が湿っぽい分、強調されるのかも。
#4「単騎、千里を走る。」張藝謀/2005/中国=日本/Feb. 11/日劇3
高倉健の外国ロケもの。1960年代には何本もあるが、大陸は本作が初めてじゃないかな。『網走番外地』の唄がそのまま使えそうな雲南省の辺境へ健さんが流れていく。息子の妻役である藤純子の娘、健さんが日本で住む寒村の海辺シーンも、かつての東映を連想させる。赤い着物は着ていないものの刑務所まで出てきた。とはいえ、健さんと末期癌の息子(中井貴一だったらしい)の関係と、仮面劇俳優とその私生児の関係を重ね、中国語での“人間”を描いたこの作品は、やはり義理人情ものとは一線を画す。張藝謀だからね。日本ではビデオデッキも人に頼んで設置してもらうのに、渡航時に猛特訓したのか、中国ではDVカム、デジカメ、ケータイを使いこなすのがおかしい。石頭村の目抜き通りでの宴会シーンが圧巻。
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#3「博士の愛した数式」小泉堯史/2005/『…』製作委員会/Feb. 9/TOHOシネマズ川崎プレミアスクリーン
深津絵里もお母さんを演じる歳になった。ふかっちゃん#11。『父ありき』と同じ上田が舞台。ふかっちゃんが家政婦として、記憶が80分しかもたない数学者・寺尾聰の家に行く。映画としてはまったく詰まらない。物語構造が最悪。これは原作がそうなのかもしれない。まあ、もともとふかっちゃん目当てなので没問題である。自転車をこぐ姿が爽やかだ。ちなみに“博士の愛した数式”とはオイラーの等式:exp(iπ)+1=0のこと。iとπは浅丘ルリ子と寺尾聰で、彼らの禁断の関係を表現しているのだろう。そんなことなどどうでもよいが、浅丘ルリ子が宇野重吉ともかつて共演していたことを思えば、なかなか感慨深い。浅丘ルリ子、相変わらずの化物メイク。やりすぎて一生取れないのかも。
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#2「真白き富士の嶺」森永健次郎/1963/日活/Feb. 4/ラピュタ阿佐ヶ谷
今度、逗子湘南ロケーション映画祭(2/18@逗子文化プラザなぎさホール)でも上映されるらしいが、わざわざ阿佐ヶ谷まで観に行く。この鎌倉映画は、いづみさま#82。葉山〜逗子〜鎌倉の実景が随所に出てくる。日影茶屋とか鎌倉高校とかも。聖テレジア病院は腰越にあるのに、映画中では気のせいか由比ヶ浜の山上にあるように見える。主役は例によって薄幸の吉永小百合だが、本作は、いづみさまが思い詰める姿を堪能する映画である。漢字みたいな妙な柄のワンピースが苦悩とマッチ。(半分冗談なので真に受けないように。)嫉妬し悩める様子も上品ないづみさまである。浜田光夫はちょい役のくせに二番目にクレジット。小高雄二の方が随分と活躍してたのにね。ズームしまくり、やたらと動くキャメラに閉口。
#1「秘密のかけら」アトム・エゴヤン/2005/加=英=米/Feb. 4/シャンテ・シネ2
やっと今年の映画生活が始まった。エゴヤン作品を観るのはひさしぶりの気がする。あいかわらず恐怖と宗教を挟み込んだミステリアスな作風だが、本作は僕には面白くなかった。1972年とその15年前の間を何の断りもなく行ったり来たりする構成はわかりにくいわけではないけど、ストーリーテリングに対する効果が感じられない。“事件”の犯人像もその動機もしょぼい。半分ポルノ女優みたいな演技が必要な関係からだろう、いい女優が使えてないことも問題。で、コリン・ファース。『アナザー・カントリー』から20年余。立派な、ただのおっさんだ。彼とケヴィン・ベーコンが司会していた“テレソン”なる24時間テレビの元祖みたいな番組は(番組名はともかく)実在したんだろうな。いかにもアメリカンな偽善的匂いがする。
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Last update: 12/28/2006

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